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恍惚なる治療[改訂版]
第15章 身体を重ねる
翌日、いつもより身嗜みを整え、オシャレな服を着て柳川さんと家を後にして駅に向かう。
右手にギプスをしている為、ジャケットに袖が通せず、左側は袖を通し、右側は羽織った気取った格好になったかと思ったら、柳川さんが「似合っている」と褒めてくれて、少しだけいい気分になった。
「そろそろ寒くなりますから、冬服を買いに行きましょうか」
「はい」
柳川さんと肩を並べて、触れ合いそうな距離で歩く。
俺の状態を気にして、離れられるかと思っていたが、いつも通りで安心した。
駅に着いて電車に乗ると混雑しており、人混みを避けて角の方で待機する。
「すみません、人の多さを考えてなくて…人の多さに気持ち悪くなってないですか?」
「いえ、今は平気です」
普段ならこれくらいの人の多さで気持ち悪くなってるのに、今は全く不快感が現れない…
柳川さんが傍に居てくれているお陰か…
隣を見れば、柳川さんと目が合い、微笑んでくれる。
唇が触れそうな距離で、この場でキスしたらどんな反応をするのか、なんていつに無く不埒な想像をしてしまった…
それだけ寂しくなっているという事なのか…
「佐伯さんどうされました?」
「いえ、何も…」
「気持ち悪くなったらいつでも仰って下さいね」