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恍惚なる治療[改訂版]
第15章 身体を重ねる
安心してもらおうと、強張る表情を無理矢理笑顔にすると、柳川さんの手が頰に触れる。
「余り無理しないで…今は笑顔じゃなくてもいいんですよ」
「すみません…」
「怒ってるわけじゃないから謝らないで」
「はい」
「それよりアイス買ってきたんですけど、食べますか?」
「はい、いただきます」
カップアイスを1つ持ってくると、スプーンでアイスを掬って俺の口の前に差し出した。
「自分で食べられますって」
「いえ、させて下さい。口を開けて」
「あー…」
アイスを口に入れてもらえば、甘いバニラの味が口の中に広がる。
「美味いです」
「そうですか?良かった」
柳川さんの笑顔を見ていると、自然に頰が緩む。
それを柳川さんは穏やかな笑みを浮かべてアイスを口に運んでくれた。
「ようやく佐伯さんの笑顔が見られました」
「えっ?」
「笑顔を見せてくれる時もあったけど、どこかぎこちない笑顔だった気がします…いつもの可愛らしい笑顔に戻ったのは心の枷が少し無くなったからですかね」
「それもあるかもしれないけど…柳川さんがこんな俺を受け入れてくれたから、だから大丈夫なんだと思います」