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セイドレイ -re:BORN-
第2章 日常
そして、ついにスカートの中に侵入したその手。
きっとその男は、まず女子高生のショーツの感触をまさぐるつもりだったに違いない。
さらにあわよくば──この時点でどこまで考えていたのかは不明だが、これまでは布の上から触れるだけだったその奥に潜む秘境へと一歩近づいたことに、胸の高鳴りを感じずにはいられなかったであろう。
しかし、ここで男の手の動きがピタリと停止する。
大胆になるばかりだったその手からは、一変してなにやら戸惑いのようなものが伝わってくる。
(──ダメッ、ダメなのっ…)
男が戸惑うのも無理はない。
なぜなら──亜美は下着を身につけていなかったのである。
この男が痴漢の常習者なのかは分からないが、たとえそうだったとしてもこれにはさすがに驚いたであろう。
この近辺では、富裕層の子女が通うことで有名である光明学園──その由緒ある制服を身にまとった世間的には「お嬢さま」とされる女子高生が、どういうわけかノーパンで朝の混雑した列車に乗り、通学しているという驚愕の事実。
このことを、この男がどう受け止めたのかは分からない。
しかし、痴漢行為をはたらくような異常者であれば、きっとこのように都合のいい解釈をしたのではないだろうか。
『この少女は、自ら望んで痴漢されているのではないか』と──。
「────…ンッ!!」
止まっていた男の手が、再び動きはじめた。
そこにはもう、躊躇のようなものは一切感じられない。
その手の動作からは、これは犯罪などではなく合意のうえであるとでも言いた気であるような、そんな図々しさがあった。
亜美は思わず漏れてしまいそうになる声をどうにか押し殺した。
目をつむり、呼吸を止め、全身を強ばらせ、スカートの中で暴れ出したその犯罪者の手に必死であらがおうと試みる。
(違うっ…わたしは感じてなんか…感じてなんかない────)