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セイドレイ -re:BORN-
第2章 日常
(イッ…、イヤッ────)
何者かの手の甲が、亜美の尻に触れた。
偶然を装っているふりをして、亜美の反応を伺っているつもりなのだろうか。
亜美が声を上げないのをいいことに、その手の動きは徐々にエスカレートしていく。
男は手の甲を裏返すと、もはや開き直ったかのような手つきで尻を撫ではじめた。
明らかに意思を持ったその手の動きは、亜美の臀部の盛り上がりを下から上へ、また下から上へと何度もなぞるように繰り返す。
(もう…やめてっ──)
痴漢行為をはたらく者にとって、亜美のように泣き寝入りしてくれる対象は恰好の餌食であろう。
この男は亜美が痴漢に気づいていることを分かったうえで、この卑劣な行為に及んでいるのだ。
『次は~寺門~、寺門駅に停車します~』
次の停車駅を知らせるアナウンスに、男の手が一瞬ひるむ。
しかしこれもいつものことだった。
列車が再び走り出せば、すぐさま行為を再開してくるのだ。
(あと一駅、あと一駅我慢すればっ──)
亜美は毎朝、そう念仏を唱えることでこの二駅間をなんとかやり過ごしていた。
もちろん、こんな卑劣極まりない行為に屈するのは不本意でしかなかったが──実は大きな声をあげられない「理由」があったのである。
あと数分もすれば、この苦痛から解放される──そう自分に言い聞かせ、身の毛がよだつ嫌悪感に必死で耐えしのぶ亜美。
しかし間もなくして、この日はどうやらいつもと様子が違うことに亜美は気づいた。
(え…?ウソっ…?!)
いつもはスカートの上から尻を撫でるだけだったその男の手が、ついに「その中」へと侵入を試みているではないか。
下から上へ撫で上げる手つきはそのままに、動作を繰り返しながらスカートの裾を器用にまくりあげてくる。
回数を重ねることでより気を大きくしているのだろう。
もはやこの女はなにをしても抵抗しない──。
亜美はこの男に、もはや完全に舐められてしまっていたのだ。
(ダメッ…お願いっ────)