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あの時、あのBARで
第4章 BAR・エロス
重い扉を押し開けながら、恐る恐る店内をのぞき込む若い女性に、
余裕の笑みを浮かべながらあの時の自分の姿を思い出した。
私も・・
あの時、初めてエロスの扉を開けた時、
きっと彼女のような表情を浮かべていたに違いない。
「いらっしゃいませ、エロスへようこそ。さ、どうぞこちらへ」
妖艶さに欠ける私にできるのは、
初めてであろう客の不安と緊張を最小限にまでおさえるための陽気な笑顔をむけることだ。
「どうぞ、お気軽に。私も初めての時はお客様のように緊張しましたよ。
もうガッチガチで。
とくに、あのバーテンのあまりのイケメンぶりにもう口が開きっぱなしで」
そこまで言うと女性客は、軽やかな声を上げて笑い出した。私もつられて笑い出す。
その様子を窺っていた話題の人物が近づいてきた。