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あの時、あのBARで
第4章  BAR・エロス

 探し当てるのにどれだけの時間を費やしたことか。
ネット検索でプリントアウトした地図を片手に、六本木から麻布のエリアを
幹線道路から内側へと攻めた。
 一番のキーワード、細い路地の奥、その細い路地を地図の中で探し出し、
照らし合わせながら歩き回るのは、中年女にとってはかなりの重労働だった。
夏の日差しも容赦なく体力を奪い、気力も残り少なくなってきた。

 もうあきらめようか、と気持ちが萎え始めた、探索四日。
ついに探し当てた。「BAR・エロス」を。
 地図に記されていない細い路地の奥、煉瓦づくりの三軒長屋の一番奥に、
看板を掲げずドアにかけられたプレートの表面だけに、店名が記されていた。
 OPENの文字の下にキラキラと光る塗料で書かれていた、
「BAR・EROS」の文字。
これまでの努力が報われた瞬間だった。
 
 よし、きっとこの店で相手を見つけてやる、と興奮に心躍らせて
店の写真を撮ったあの時に、まさか自分がここのママになるとは、
考えてもみなかった。おまけに、
美しいイケメンバーテン・紫苑と、恋仲になるなんて・・



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