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マスタード
第2章 想い出の店
どこかで夕食を食べて妻の実家に星志を送っていくつもりが自分の家に帰ってきてしまった。
星志と一緒にいる時間が少しでも長い方がいいという思いやリサとの余韻に浸りながら飲みたい気持ちがそうさせたのかも知れない。
妻の実家には車なら5分ぐらいで、歩いても30分ぐらいだ。まだそんなに遅くはない。妻の実家に行く途中には安くて美味しい店もあるから、そこで夕食がてらちょっと飲んで歩いていくことにした。
とりあえず家に入ろうとすると灯りが付いていた。出かける時には確かに消したはずなのに、もしかしたら忘れて金曜から今までずっと付けっぱなしだったのか。無駄に電気代がかかってしまったとゾっとして家に入ると妻が帰ってきていて夕食の支度をしていた。
「お帰り~、旅行楽しかった」と満面の笑顔で星志を迎えると、奏には目も合わさずに「悪かった」とポツリと言った。
やられたと奏は内心で舌打ちをした。このままでは慰謝料もなしで離婚されても仕方ないと両親に言い含められたというところだろう。完全に先手を打たれて出鼻をくじかれた。
こうして一緒に住んでいるのに別居している妻との生活がまた始まった。
「悪かった」とは形式的に言っただけで、少しも思ってはいないのだろう。妻の態度は変わることはなく、むしろ酷くなっていった。
ずっとリサのことを想っていながら、仕事も忙しくなってなかなか連絡を取ることもできないまま1年が経った。
また吹奏楽の大会であの街へ遠征することが決まったので、ポーカーフェイスに振るまいながらも内心では小躍りしていた。またリサに会える。
また会えるとリサにメールを送ったのだが返信はなかった。嫌われてしまったのか、長い間連絡を取らなかったので怒っているのかと不安になった。
この時の遠征のメンバーは奏にとっては幸いなことに酒を飲まない先生ばかりだったので、夜はみんなで飲みに行ったりすることもなくフリーになった。
リサの家まで行ってみたい気持ちもあったが、出勤前の忙しい時に迷惑だと思ってホテルで部屋飲みをして『愛』が開店する時間を待った。
ドキドキしながら『愛』のドアを開ける。
たまに飲み会の延長で先輩に連れられて行くことがあるぐらいでスナックのような店には滅多に行かないので場馴れしていないし、リサのこともあるので、もう心臓が飛び出しそうにドキドキしている。
星志と一緒にいる時間が少しでも長い方がいいという思いやリサとの余韻に浸りながら飲みたい気持ちがそうさせたのかも知れない。
妻の実家には車なら5分ぐらいで、歩いても30分ぐらいだ。まだそんなに遅くはない。妻の実家に行く途中には安くて美味しい店もあるから、そこで夕食がてらちょっと飲んで歩いていくことにした。
とりあえず家に入ろうとすると灯りが付いていた。出かける時には確かに消したはずなのに、もしかしたら忘れて金曜から今までずっと付けっぱなしだったのか。無駄に電気代がかかってしまったとゾっとして家に入ると妻が帰ってきていて夕食の支度をしていた。
「お帰り~、旅行楽しかった」と満面の笑顔で星志を迎えると、奏には目も合わさずに「悪かった」とポツリと言った。
やられたと奏は内心で舌打ちをした。このままでは慰謝料もなしで離婚されても仕方ないと両親に言い含められたというところだろう。完全に先手を打たれて出鼻をくじかれた。
こうして一緒に住んでいるのに別居している妻との生活がまた始まった。
「悪かった」とは形式的に言っただけで、少しも思ってはいないのだろう。妻の態度は変わることはなく、むしろ酷くなっていった。
ずっとリサのことを想っていながら、仕事も忙しくなってなかなか連絡を取ることもできないまま1年が経った。
また吹奏楽の大会であの街へ遠征することが決まったので、ポーカーフェイスに振るまいながらも内心では小躍りしていた。またリサに会える。
また会えるとリサにメールを送ったのだが返信はなかった。嫌われてしまったのか、長い間連絡を取らなかったので怒っているのかと不安になった。
この時の遠征のメンバーは奏にとっては幸いなことに酒を飲まない先生ばかりだったので、夜はみんなで飲みに行ったりすることもなくフリーになった。
リサの家まで行ってみたい気持ちもあったが、出勤前の忙しい時に迷惑だと思ってホテルで部屋飲みをして『愛』が開店する時間を待った。
ドキドキしながら『愛』のドアを開ける。
たまに飲み会の延長で先輩に連れられて行くことがあるぐらいでスナックのような店には滅多に行かないので場馴れしていないし、リサのこともあるので、もう心臓が飛び出しそうにドキドキしている。