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マスタード
第2章 想い出の店
空いている宿舎という体になっているリサのアパートに戻ると夜はみんなでリーズナブルな居酒屋に飲みに行った。

解散して夫婦とリサと別れた。リサは『愛』へ出勤して行った。
星志を寝かしつけたら『愛』に行きたいところだけど、星志をひとり残すわけにもいかないし、こんな時に奏がここにいることを不思議がられて、ヘタをするとママにリサが個人的に奏と会ったことがバレたら大変だから、そこはガマンした。

「ただいま、奏ちゃん。今日は楽しかったよ。ありがとうね」

リサが帰ってきた。出迎えるなり玄関でキスをした。こんな甘いことは新婚の時だってしたことがない。

もう星志も眠っている。朝がきたら水族館に行って、そしたらまたしばらく会えなくなる。いつも一緒にいたいのに・・。

そんな名残惜しさもあって、ふたりはまた激しくお互いを求め合った。
奏もリサもお互いに相手の体を五感に焼き付けたくて激しく絡み合った。

朝がきた。また昨日の夫婦と女の子がやって来てみんなで水族館に行った。

イルカやアザラシやペンギンのショーが見れたり触れ合ったりできる水族館に子供たちは大はしゃぎである。

実に楽しいのだけど、奏とリサだけがもうすぐお別れだという寂しさを抱えていた。

夕方になった。星志を妻の実家に送らなければならないので、遅くならないうちに帰らなくてはならない。

「楽しかったです。ありがとうございました」
「遠路お疲れ様です。お気をつけて」

とみんなが見送ってくれる。

「こちらこそ、ありがとうございました。また誘ってください」

とみんなに挨拶をして、リサとは見つめ合って奏は車に乗り込んだ。

行く時はリサに会えることでウキウキ、ドキドキして運転したけど、帰りはリサの余韻と寂しさを抱えて運転している。

星志は動物園や水族館が楽しかったと嬉しそうに話していたが、すぐに眠ってしまった。

妻とは別れよう。そしてリサが欲しい。
妻は自分勝手な理由で家を出ている。妻が自分に対してどれだけ理不尽なことをしたのか両親にも言ってやって認識させた。

こちらが慰謝料を貰いたいぐらいだけど、それは勘弁してやるというように話を持っていけば上手くいけば慰謝料なしで離婚ができるかも知れない。
無血開城ならぬ無血解放を目指してがんばってみるか。

そう考えて頭の中でシミュレーションをしながら奏は車を走らせた。

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