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マスタード
第6章 幸せのタイムリミット
離婚して故郷であるこの街にやってきたのか、女子生徒は母親と祖母の女性だけの家庭環境だ。
親の離婚ということも女子生徒が心を閉ざしてしまった大きな要因かも知れない。
ちゃんと高校にも行ってくれてよかったとは思うが、一歩間違えば自分の子供の星志も同じようになっていたかも知れないと思うと尚更放ってはおけなくて何度も家庭訪問をしたが、なかなか会ってはもらえい状況だった。
2学期の終わりには今後の希望を身上書に書いて提出しなければならない。
奏はここに残留することを希望する身上書を提出した。愛美や陽葵と一緒にいたい気持ちはもちろんあるが、それとは別に真剣に不登校の女子生徒のことを思っていた。ちゃんと離婚もできずに愛美たちを愛してしまったような最低の人間だとは思うが、それでも人として、親として、教師として、このまま不登校のまま女子生徒を見捨てるようにここを去ることはできない。
残留希望は奏にとって一大決心であったのだが、あっさりと身上書は却下されて書き直すことになった。
生徒の不登校を解決できないままに離れるなどいくらでもあることで、そんなことを言っていたらいつまでも転勤などできないと言われた。
吹奏楽部の高い指導力には感謝と敬意を評するし、その点ではこの学校にいて欲しいが、そういうワケにもいかない。吹奏楽部の指導者としては一流だが、教師としては甘過ぎると厳しいことも言われた。
生徒に親身になるのも大切だが、親ではないのだから、いつまでもその生徒と一緒にいて助けてあげることなどできないとも言われた。
こうして残留希望は却下されたまま愛美や陽葵とのクリスマスを過ごした。
好きな人と過ごすクリスマスはとても幸せなのに、もう二学期も終わってしまうと思うとクリスマスソングを聴きながらも心はセンチメンタルになっていった。
そしてついに年が明けてしまった。
年末年始は家に帰るしかなかったので、この街に戻ってきてから愛美と陽葵と初詣に行った。
着物姿の愛美と陽葵はとても可愛かった。
この神社はキセキのパワースポットとして知られているので正月が終わっても大勢の人で賑わっていた。
「それにしてもスゴい人だね。こんなに大勢の人の願い事を叶えるなんて神様も大変だ」と奏が言うと愛美はきゃははと笑った。
「本当よね。あたしたちの願い事を優先してくれなくちゃ困るわよね」
親の離婚ということも女子生徒が心を閉ざしてしまった大きな要因かも知れない。
ちゃんと高校にも行ってくれてよかったとは思うが、一歩間違えば自分の子供の星志も同じようになっていたかも知れないと思うと尚更放ってはおけなくて何度も家庭訪問をしたが、なかなか会ってはもらえい状況だった。
2学期の終わりには今後の希望を身上書に書いて提出しなければならない。
奏はここに残留することを希望する身上書を提出した。愛美や陽葵と一緒にいたい気持ちはもちろんあるが、それとは別に真剣に不登校の女子生徒のことを思っていた。ちゃんと離婚もできずに愛美たちを愛してしまったような最低の人間だとは思うが、それでも人として、親として、教師として、このまま不登校のまま女子生徒を見捨てるようにここを去ることはできない。
残留希望は奏にとって一大決心であったのだが、あっさりと身上書は却下されて書き直すことになった。
生徒の不登校を解決できないままに離れるなどいくらでもあることで、そんなことを言っていたらいつまでも転勤などできないと言われた。
吹奏楽部の高い指導力には感謝と敬意を評するし、その点ではこの学校にいて欲しいが、そういうワケにもいかない。吹奏楽部の指導者としては一流だが、教師としては甘過ぎると厳しいことも言われた。
生徒に親身になるのも大切だが、親ではないのだから、いつまでもその生徒と一緒にいて助けてあげることなどできないとも言われた。
こうして残留希望は却下されたまま愛美や陽葵とのクリスマスを過ごした。
好きな人と過ごすクリスマスはとても幸せなのに、もう二学期も終わってしまうと思うとクリスマスソングを聴きながらも心はセンチメンタルになっていった。
そしてついに年が明けてしまった。
年末年始は家に帰るしかなかったので、この街に戻ってきてから愛美と陽葵と初詣に行った。
着物姿の愛美と陽葵はとても可愛かった。
この神社はキセキのパワースポットとして知られているので正月が終わっても大勢の人で賑わっていた。
「それにしてもスゴい人だね。こんなに大勢の人の願い事を叶えるなんて神様も大変だ」と奏が言うと愛美はきゃははと笑った。
「本当よね。あたしたちの願い事を優先してくれなくちゃ困るわよね」