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マスタード
第8章 別離
一緒に飲んだ時から奏のことをいいヤツだと思った。憎き恋仇に宣戦布告するつもりだったのに、自分も奏のことを気に入っていた。友達になりたいとさえ思った。
「あんたがそう来るんならオレも言わせてもらうわ。遊びだなんてヒドいことを言ってすまなかった。愛美があんなに元気に笑うようになったのはあんたがいてくれたおかげだ。本当にありがとう」
秀一が愛美に再開したのは『囲炉裏』が開店した頃だ。その頃の愛美は二度目の夫と別れたばかりでかなり落ち込んでいた。その頃から秀一は『囲炉裏』の常連になったのだが、自分には愛美を元気にすることはできなかった。
そこへフラりと奏がやってきたら、男の人が苦手だった陽葵の心はつかむわ、愛美には元気が戻るわ・・そんな奏に秀一は激しく嫉妬していた。
店が閉店しても一緒にいたり、休日にはどこかに出掛けたり、愛美と奏が男と女の関係になったのはすぐに分かった。
愛美と奏が営んでいるのを想像して何度泣きながら布団の中で自分を慰めたか分からない。
秀一は愛美と陽葵を連れて住み込みで働ける所に引っ越したと、ふたりが元気でいる様子を教えてくれた。
愛美の母親は恋人の老人の元へ行って実質的に結婚したらしい。
「ありがとう」と奏は愛美の家族が皆元気でいてくれたことを教えてくれた礼を言った。
秀一には感謝の気持ちでいっぱいだったが、どうしても言っておかなければならないことがある。お願いしなければならないことが・・。
ビールテイストをゴクリと飲み込んで奏は話を切り出した。
「愛美が二度も離婚をすることになった理由は知っているか?」
「本人からは何も聞いていない。でも、体の何ヵ所かに染みついている痣なら見た」
「そうか・・」
痣を見たということは愛美と秀一は裸の関係も結んだということだ。ふたりが結婚したということが生々しい現実となって奏はショックの波に呑み込まれた。
と同時に深い安堵もしていた。愛美は何も話していないから、秀一はふたりの元夫との離婚の理由が同じだと思っている。
夫になったのに真相を知らないのは可哀想だたとも思うが、その方がいい、いや、そうであるべきだ。
陽葵の姉の美海がふたり目の夫に襲われたなどというおぞましいことは愛美も誰にも知られたくないだろうし、そんなことは知らないままの方が秀一だって幸せだと思う。
「あんたがそう来るんならオレも言わせてもらうわ。遊びだなんてヒドいことを言ってすまなかった。愛美があんなに元気に笑うようになったのはあんたがいてくれたおかげだ。本当にありがとう」
秀一が愛美に再開したのは『囲炉裏』が開店した頃だ。その頃の愛美は二度目の夫と別れたばかりでかなり落ち込んでいた。その頃から秀一は『囲炉裏』の常連になったのだが、自分には愛美を元気にすることはできなかった。
そこへフラりと奏がやってきたら、男の人が苦手だった陽葵の心はつかむわ、愛美には元気が戻るわ・・そんな奏に秀一は激しく嫉妬していた。
店が閉店しても一緒にいたり、休日にはどこかに出掛けたり、愛美と奏が男と女の関係になったのはすぐに分かった。
愛美と奏が営んでいるのを想像して何度泣きながら布団の中で自分を慰めたか分からない。
秀一は愛美と陽葵を連れて住み込みで働ける所に引っ越したと、ふたりが元気でいる様子を教えてくれた。
愛美の母親は恋人の老人の元へ行って実質的に結婚したらしい。
「ありがとう」と奏は愛美の家族が皆元気でいてくれたことを教えてくれた礼を言った。
秀一には感謝の気持ちでいっぱいだったが、どうしても言っておかなければならないことがある。お願いしなければならないことが・・。
ビールテイストをゴクリと飲み込んで奏は話を切り出した。
「愛美が二度も離婚をすることになった理由は知っているか?」
「本人からは何も聞いていない。でも、体の何ヵ所かに染みついている痣なら見た」
「そうか・・」
痣を見たということは愛美と秀一は裸の関係も結んだということだ。ふたりが結婚したということが生々しい現実となって奏はショックの波に呑み込まれた。
と同時に深い安堵もしていた。愛美は何も話していないから、秀一はふたりの元夫との離婚の理由が同じだと思っている。
夫になったのに真相を知らないのは可哀想だたとも思うが、その方がいい、いや、そうであるべきだ。
陽葵の姉の美海がふたり目の夫に襲われたなどというおぞましいことは愛美も誰にも知られたくないだろうし、そんなことは知らないままの方が秀一だって幸せだと思う。