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よりどりみどり物語
第2章 7月1日朝8時半
みどりは、校門の前に立ち止まった。

それは、とんでもなくすごい光景。
校門を挟むようにして、ざっと30人ばかりの半袖体操着と短パンの男子たちがずらりと並んで、立っている。
しかし、男子たちは一言も発しないので、シーンと静寂に包まれていた。
しかも、男子たちは、みどりのほうを見ようともせず、視線をそらしている。
これは、男子たちがお互いをけん制し合っているというのもあるが、みどりの意思を尊重しようという優しさの表れでもある。

みどりは、古代の中国の皇帝が、毎日数千人の女子を並べさせ、その日のスケベの相手をよりどりみどりで選んでいたという話を思い出した。
まさに、よりどりみどりであった。

みどりは、男子たちを端から順に、軽く視線で追った。
じつは、既に目星は付けてある。第1候補は、高3の先輩、18歳のコージである。
この中高一貫校ではトップクラスの超絶イケメン男子。成績優秀、スポーツ万能で、180センチの高身長の、夢のような理想の男子であった。
ただ、コージには、お似合いの女子がいるという噂。同じく高3に、才色兼備の女子がいるという。

『コージ、いるかな?』
みどりは、不安だった。
しかし。
校門の前に群がる男子の中に、ひときわ背が高く目立っている姿を見つけ、みどりは感激した。
『やったあ………』

みどりは静かに、コージの前に進むと、コージの胸にそっと顔をつけた。
その瞬間、コージは、言葉は発しなかったが、こぶしを高々と突き上げガッツポーズ。
他の男子たちが、いっせいに落胆の表情に。

そして、みどりは、コージと手をつないで、そこから静かに去っていった。
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