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スカーレットオーク2
第10章 10 小夜子
「あの時が人生の絶頂だったわね」
死を目の前にして生命の輝いた瞬間を話す小夜子の美しさは圧巻だった。
青白い小夜子の頬が薔薇色に染まる。
「私は一人でも生きていけたけど和夫のおかげでいつ死んでもいいと思えたわ」
心からそう思っているのだろう。
強がりでも誤魔化しでも美化でもなく率直な感想のようだ。
「きっと和奏は和夫のためね」
笑って小夜子は言う。
「愛の証じゃないの」
「ロマンチストねえ」
直樹の言いように小夜子は優しく微笑んで言った。
「直君。子供なんて気にしなくていいわよ。あなたは目の前の緋紗ちゃんを大事にね」
「ん」
素直に頷いた。
「和奏には可哀想だけど彼女は彼女の人生がきっと拓けると思うから。悪いけどたまにピアノ弾いてやってくれないかな」
小夜子にとって幼い娘の和奏でさえ魂を持った一人の人間なのだ。
「モーツアルトお願い……」
「女王様。承知いたしました」
うとうとし始めたので直樹は静かに部屋を出た。
死を目の前にして生命の輝いた瞬間を話す小夜子の美しさは圧巻だった。
青白い小夜子の頬が薔薇色に染まる。
「私は一人でも生きていけたけど和夫のおかげでいつ死んでもいいと思えたわ」
心からそう思っているのだろう。
強がりでも誤魔化しでも美化でもなく率直な感想のようだ。
「きっと和奏は和夫のためね」
笑って小夜子は言う。
「愛の証じゃないの」
「ロマンチストねえ」
直樹の言いように小夜子は優しく微笑んで言った。
「直君。子供なんて気にしなくていいわよ。あなたは目の前の緋紗ちゃんを大事にね」
「ん」
素直に頷いた。
「和奏には可哀想だけど彼女は彼女の人生がきっと拓けると思うから。悪いけどたまにピアノ弾いてやってくれないかな」
小夜子にとって幼い娘の和奏でさえ魂を持った一人の人間なのだ。
「モーツアルトお願い……」
「女王様。承知いたしました」
うとうとし始めたので直樹は静かに部屋を出た。