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スカーレットオーク2
第11章 11 動揺
 緋紗は静かにベッドで佇んでいる直樹を黙って見つめた。

きっと小夜子に会って色々考えているのだろう。

緋紗は直樹が言葉を発するのをじっと待った。

直樹はそばに居る緋紗の手をそっと引っ張って自分の胸に抱き寄せ、黙ったまま口づけをする。

緋紗も黙って応じる。



 しばらく口づけを交わした後、直樹が静かに言った。

「小夜子さんは最初から最後まで女王様なんだな」

 毅然としていた小夜子を目に浮かべる。

まだ薬が効くのかもしれないが相当な痛みがあるはずだ。

緋紗は自分の伯母をも苦しめた症状を思い出して震えた。



「伯母と同じ……」

 緋紗の伯母は夫を震災で亡くしそして本人も十年後に癌で亡くなっていた。

大好きな伯母を思い出し、これから別れる小夜子のことを想って緋紗は震え、悲しいとか辛いとかそういう感情以上の恐怖が緋紗を襲う。

直樹は緋紗の身体を温めるようにさすりながら抱きしめた。



「子供がいたほうがいいのかな……」

 思わず緋紗はそう呟いていた。

それを聞いて直樹は大きくため息をつく。



「代替を考えないでくれ。どっちにしろ喪失感は免れないんだから。俺には慰めにはならないよ。気が少しそっちに向くだけだ」

 緋紗は直樹の静かな怒りを感じて押し黙った。

直樹自身も自分の怒りの感情にハッとしながらこぶしを握り締めて黙り込み、やがて緋紗の震える肩を抱く。

「小夜子さんは死にたくないとは言わなかった。いつ死んでもいいぐらい後悔のない人生をおくって来たって言ってたよ」

 緋紗は震える声で「伯母さんもです」と言った。
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