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第3章 中学１年生

ー　夕食後　ー

　私立・中井中学校は中井大学の付属校で、高校もあるエリート進学校だ。

　いわゆる全国から小学生が、中井中学校に入るためにお受験をしないと入学出来ない。

　それゆえに寄宿舎制で、此処にいる男子も女子も寮に住んでいるそうだ。

　入学時に、吹奏楽部入部を目指す保護者にも、合宿で男子は女子、女子は男子として下着から服装までチェンジした上で、同じバンガローで男子と女子が混合で生活する方針は告げてあるそうだ。

　仲間同士で間違いは犯さない。男子は女子の生理現象にも理解を持つ、女子は男子の性的欲望を理解しながらもトラブルにならないような、あしらい方を学ぶ。

　そんな話を、田舎の小学校４年生から６年生の、仲の悪い男子と女子にレクチャーした。

　この小学校でも、市内パレードや音楽会、運動会で小学５年生と６年生は鼓笛隊という音楽隊を結成して練習や披露をする。

　中井中学校とは演奏力もユニフォームも比較にすらならないけど、公式な場では、男子は白のワイシャツに黒の紺のズボン、女子は白のブラウスに紺のスカートを履く。

　子供会役員や引率のママさんたちも

「このまま男子と女子が仲が悪ければ、ウチも男子にスカート履かせようかな？」と言いだし男子は猛反発して、女子は賛成と盛り上がる。

　そして、キャンプ場の管理人の許可を得て、駐車場で即席のマーチングのミニコンサートが始まった。

　周囲は人家が無い山の中。

　午後７時だから、仮に騒音問題が出ても就寝に影響はしないだろう。

　ただ、ポテポテと歩きながら楽器を演奏するのも大変なのに、中井中学校のマーチングは激しいダンスや楽器を左右に揺らしながら音もぶれずに綺麗な曲を奏でる。

　特に、ミニスカートを履かされた男子は恥ずかしさもなく完璧な女子と同等のパフォーマンスをして、演奏するミニスカートの男子も衣装は気にせず演奏だけに集中している、男子役の女子は女子役の男子をフォローして見守るようなシーンすらあった。

「素敵。なに？この統一感。男子とか女子とか性別を超えた未知の世界」

「もう男装とか女装とか見かけの服装なんか論外だぜ。逆にカッコ良いよ」

　紛いなりにも、鼓笛隊という同じ歩きながら演奏をする地元小学生達にはレベルが違い過ぎる華麗で激しい演奏は最初の一曲だけで、地元小学生達の心を鷲づかみにした。