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ダメだよ。絶対、赦さない。
第1章 ダメだよ。キスだけでイッたら
「ん、っ…」

大田レイは、この緑道の脇の暗がりで上司である高田英雄の唇が自分の口へと覆い被さると、1.3秒間待ってしまった。

最初は、まだ外気に触れていて間もない粘膜の冷たさ、他人の粘膜の形状の冷たさによる違和感。

もしもこの男が見知らぬ暴漢なら、それらの違和感が優位なこのゼロ秒台に抵抗をするだろう。まだ間に合う時間だ。

しかし、待ってしまった。

既に脳は、会社で性的に視るなと言われてもどうしても辞められなかった対象と二人きりで暗がりを歩くというシチュエーションに、理性などというものを痺れさせていた。

だから、他人の口の最初の違和感というものが蒸発するまでは一瞬だった。

密室に閉じられた口内で高田英雄の舌が、彼自身の突然の行動と比べて少し控えめに、大田レイの舌を舐める。

この1.3秒後が過ぎ去っても、された方の舌が動きもしなかったら、這わせた舌はとんだピエロの一人踊りだ。
尤も、深い口淫で反応しない相手であれば1.3秒の間に口を離して殴っていることであろう。

しかし大田レイは1.3秒を、抵抗もせず、待ってしまった。
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