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ダメだよ。絶対、赦さない。
第1章 ダメだよ。キスだけでイッたら
無反応か、受け入れたのか、答えの不明瞭なギリギリのラインで、舐めなぞられる舌をただ柔らかく震わせて待った。

相手に、抵抗もせず受け入れたと勘違いをさせることもでき、且つすぐに舌を絡み返すなどもせず、本当は拒絶したいものへの抵抗がただ遅れたとも言えるこの絶妙な1.3秒が経つのを。

それからは限界との戦いだった。

既に他人の粘膜の冷たい違和感は飛び、元々期待で脳は痺れていた所に、ずっと吸い付きたいと思っていた男の口唇が与えられたのだ。

1.3秒も待たずにちゅうちゅうと吸い付いてしまいたかった。

けれど、だめだ。
そんな風に求めてはいけない。
心から求めていると思われてはいけない。
嫌いだ。
私はこの男が嫌いなのだ。

大田レイは、格子で掬った砂のようにサラサラと零れ落ちる理性を掻き集めて、漸く両の手を相手の胸に押し当てた。

押す。

ほら、抵抗している。嫌いだ。

しかし、ウサギの前脚かなにかの突っ張りで押し退けたものは、高田英雄の体ではなく、理性だった。

1.3秒間に、自らの勇気ある行動を抵抗もせずに受け容れたと勘違いさせられた挙句、今更抵抗を表明されたことの怒りが、高田秀雄の目の前を白くフラッシュさせた。

瞬間、理性が灼き切れ、手は大田レイの上腕を掴み、舌の動きと吸着そして緩和の反復運動を以て、相手の心身に対する容赦無い侵食の意志を顕にした。

胸を押し退けようと掌に力を込める程、腕に高田英雄の指が食い込んだ。
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