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大人が寝る前に読む物語
第1章 赤ずきん
今宵は満月

漆黒に染まる闇夜を
明るく照らす満々の月

血肉が滾り、本能が呼び起こされる

そこに理性などない
いや…
理性など必要ない

所詮、この世は弱肉強食
弱いものなど淘汰されるだけ

ならば、本能が求めるがままに食い尽くす



さぁ…おいで───


──────
────────────


時はその日の朝まで遡る───

小鳥が囀る平和な朝…
雲ひとつない、すっきりと晴れ渡った青空がどこまでも広がる

この物語の主人公、赤ずきんは
白い肌を覆うように赤いマントを羽織り、
金色に輝く髪を結わえ、すっぽりと頭巾を被った


「赤ずきん…待って」

「なぁに?お母さん」

「忘れ物よ…葡萄酒は持った?」


カゴの中には焼きたてのパンと木苺のジャム

「あ…忘れていたわ」

「やっぱり…この子ったら」

「少しうっかりしただけよ」


今日は朝から山の中で1人で暮らすおばぁちゃんへのお見舞いに行くために
パンを焼き、ジャムをこしらえた

完璧だと思っていたのにな…


「赤ずきん…日が沈む前には帰ってくるのよ」

「はい…分かってるわ」

「絶対によ…今日は満月だからオオカミが出るからね」

「お母さんったら、そんなの迷信よ」

葡萄酒をカゴに入れて出かける準備は万端

「本当に気をつけてよ…寄り道なんてしてはダメよ、赤ずきん」

「大丈夫よ…遅くなったらおばぁちゃんの家に泊めてもらうから」

「そうね…それがいいわね」


心配性なお母さん

「行ってきます…」

「おばぁちゃんによろしくね…気をつけて」



朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、
暖かい日差しに目を細める


そうだ…
おばぁちゃんに花をつんでいこう


少し遠回りになるけど、まだ時間は早いし大丈夫よね


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