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第1章 死んだと思ったら、中学生に戻ってた

死んだ。
理由は、分からない。
だいたい、自害でもないかぎり、死んだ本人に死んだ理由なんてわからないのが、普通だ。
というか、自分が死んだことさえ知らないことが多い。

なぜ自分が死んだと分かったかというと、頭の上から光がさしてきて、上のほうから声がしたからだ。
「ケイタ、おまえは死んだ。心残りはあるか？」
誰の声か知らないが、それは重厚な趣のある声だったので僕は自分が死んだと確信した。
「あります。中学時代に」
「そうか。じゃ、そこに送る」
「え？」

目の前が真っ暗になり、やがて明るく輝いてまぶしくて目を閉じた。

「ケイタ！ケイタ！」
「え？誰だ？」
「何が、誰ですか？罰として、廊下に立ってなさい！」
「え？」
僕は、我に返った。
そこは、教室だ。周囲を見ると、あ…。
懐かしい顔が、隣りに、前に、後ろに、あそこに、こちらに、あちらに…。
わ？これ、中学生のとき、２年Ａ組の教室じゃないのか？
え？これは、いったい…。

「こら、ケイタ！早く廊下に出なさい！」
見ると、中２の時の担任の女子教師だ。メガネをかけうるさい、出目金（でめきん）ババアだ。
僕はしかたなく立ち上がると、廊下に出ようと歩きかけた。
いや、ちょっと待て。
「先生、生徒を廊下に出したら、学習権を奪うことになりますよ？これは、やっちゃいけない指導ですよ？」
僕は、先生に反論した。
すると。
「こらあー！生徒の分際で、口答えすんな―！」
と先生に出席簿で脳天をぐわーんと殴られた。
「うわ？先生、暴力反対！」
僕は叫んだが、先生はそ知らぬ顔。
「教育委員会に知らせ…、いや、ネットで拡散してやる！」
「ケイタ、何をわけわからんことを言ってるんだ、てめえ！後で、親呼び出しだ！立ってろ！」
僕は、教室から追い出された。

わけわからんのは、こっちだってーの。
しかたなくズボンのポケットを探る。あれ？スマホがない…。
あ、そうか。中学生のときは、スマホなんかなかったな。携帯電話が出来た頃だった。

この時、僕は、天？からの声を思い出した。
あ、そうだ、僕は死んだんだ。それで中学時代に送られたんだ…。