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blossom
第5章 Love4:見ていた男
冴島さんの口の中で薬指の先が転がされていたときだった。後ろから店の主人が近づきながら言った。
「カニクリームコロッケ、お待ちどうさま」

私はパッと手を引き、右手でその手を隠す。いけないことがバレてしまわないようにという本能だろうか。

「さぁさくらさん、温かいうちに」

そして二人一緒にいただきますと口に出し、同じ料理を食べ始める。

「おいしい…」
そうつぶやいた私の口元を冴島さんはじっと見つめた。

「さくらさんは結婚されてどれ位ですか?」
「12…13年目です」

冴島さんは?と聞こうとして、左手を見ると指輪をしていなかった。その視線に気づいた冴島さんは笑顔で言った。
「今、協議中で」

「きょうぎ……?あぁ…」

「性の不一致、でね」

「まさか…」
あんなに情熱的にしかも上手にしてくれて、奥さんは何が不満なのだろう。

「さくらさんはご主人と一致してますか?」

いいえ、うちも不一致です、と言う訳にもいかず、相応しい言葉を探す。

「夫は私には魅力を感じないみたいです」

「そんなバカな」

「難しいですね、夫婦って」

互いの趣味の話や子供の話などをしながら食べ終わると、セットのコーヒーゼリーが運ばれてきた。生クリームが可愛くのせられている。
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