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blossom
第6章 Love5:入れない男
はやる足で自転車を漕ぎ、市役所で用事を済ませる。近くの駐輪場に自転車を止めて、急いで待ち合わせのコインパーキングへ向かったが、冴島さんの車は見当たらなかった。時間は二分すぎてしまっていた。

絶望感でいっぱいになる。

唇を噛み締めながら、駐輪場へ戻ろうとしたときだった。

「さくらさんっ」
そう名前を呼ばれ、冴島さんに腕を捕まれた拍子に溜まっていた涙が零れてしまった。

「え?ど、どうかしましたか?」

「ごめんなさい、遅れてしまって…」

「時間ピッタリですよ」

「またいないかと…もう帰ってしまったかと…」

抱きしめられると余計に涙が溢れてきてしまう。私はこんなに冴島さんを焦がれていたのだろうか…


「ちょっと待ってて」
小走りで支払いを済ませた冴島さんは、シャンパン色のセダンに私をエスコートした。

「いつもと違う…」

「今日はオフなので」

「あっ、スーツじゃない」

「あはは、今ですか」
白いVネックのTシャツに爽やかなグリーンのシャツを腕まくりして着ている冴島さんは、スーツのときよりもずっと柔らかい印象だ。

「お腹は空いてますか?」

「空いてはいないですが、朝は食べてなくて…」

「なるほど…」
エンジンをかけながら、何かを考えている冴島さん。

「さくらさん、オススメのベーグルがあるんですけど、お好きですか?」

「ベーグル…興味あります」

「じゃ、まずはベーグル屋に」

すぐにホテルにでも行くのかと思っていた私は、ただのデートの様相に少しガッカリした。
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