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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「仕方ない、マクドにでも……」
 重大なことを思い出し、言葉が途切れる。財布とスマホが手元にない。財布を忘れても、スマホがあればギフトサイトでコンビニやカフェの買い物券を買うことができた。もしくはスマホケースに入れてあるポイントカードか交通系ICカードで、買い物ができた。
 何もないと分かっていながらもポケットを漁り、ため息をつく。

「おなか空いた……」
「あら、シャム猫先生?」
 途方に暮れていると、木漏れ日の様な優しい声が聞こえてきた。顔を上げると、ジャージ姿の茜が不思議顔をしている。
「茜さん、おはよ」
「おはよう、先生。元気がないけど、どうしたの?」
 力なく笑って挨拶をすると、茜は眉を下げて顔をのぞき込んでくる。

「実は……財布もスマホも、練習場に置いてきちゃって……。さっき団長のところ行ったんだけど、寝てるみたいで出てくれないんだよね。帰ろうにもカード無いし」
 連との関係を悟られまいと、空腹で鈍った思考回路を必死に回しながら話をする。
「それなら、先生はどうしてここにいるのかしら?」
「え? ……あ」
 自分があまりにも下手な嘘をついていることに気づき、背筋に冷や汗が流れる。

 電車を使ってこの街に来る未亜が、朝から無一文でふらふら歩いているのは、どう考えてもおかしい。昨日練習場に忘れたのなら、夜はどこで過ごしたのか、説明がつかないからだ。財布があればホテルや漫画喫茶、スマホがあれば架空の友達を作って彼女の部屋に泊めてもらったことにすればいい。だが、不覚にも馬鹿正直に財布もスマホもないと白状してしまった。
 どう言い訳しようか考えていると、茜は口元に手をあててクスクス笑った。

「ふふっ、追求しないでおくわ。誰にだって知られたくないことのひとつやふたつ、あるものね」
「ははは……、茜さんにはかなわないや」
 苦笑しながら、内心胸を撫で下ろす。茜のことだから、未亜と連の関係はある程度察しているだろう。茜は人の秘密を安易に喋ったりはしない。むしろ、そういったことを嫌う傾向がある。うっかり話してしまった相手が茜でよかったとつくづく思う。
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