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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
 彼女に相談を持ちかけようか悩んでいると、未亜の視線に気づいた茜が顔をのぞき込んでくる。
「先生? 私の顔に何かついてるかしら?」
「あ、ううん、ごめんね。茜さん綺麗だから、きっとモテたんだろうなって」
 我に返って言葉を返すと、茜は薄っすら頬を染め、幸せそうな笑みを見せる。ずっと見ていたくなるような、優しい笑み。きっと素敵な恋をしてきたのだろうと勝手に想像する。

「もう、何言ってるの。先生だって可愛いんだから、モテたでしょ?」
「んー、どうだろ? アタシ自身っていうより、アタシの躯目当てで寄ってくる人ばっかだったし。それにさ、告白してきてくれた人、ほとんど喋ったことない人多いし。外見で好きになられても困るっていうか、虚しくない?」
「先生って案外ドライなのね。でも確かに、あまり話さない人に好きって言われても、困っちゃうわね」
 彼女にも経験があるのか、何度も頷く。それを見て、自分は異常者じゃないと思えてホッとする。

「アタシ、人を好きになったことはないけど、依存はよくしてる。独りが怖いんだ。今まではそれでいいと思ってたけど、最近それが最低な行為だって自覚しだしたっていうか……」
「先生にしてはしおらしいわね。なんかあったの?」
「んー、なんかあったっていうか、歳を重ねたっていうか」
 どう言葉にしていいのか分からず言葉を濁すと、グラスを持つ未亜の手に、茜の温かい手が重ねられた。顔を上げると、彼女は慈しむような笑みを浮かべている。

「依存するのは悪いことではないわ。依存で成立する関係だってあるもの。それにね、恋人同士だって、カップルとか恋人とか言えば聞こえはいいけど、要は共依存よ?」
「まぁ、そうかも知れないけど……」
 小さく唸り、言葉を濁す。茜の言うことは分からなくもないが、未亜は連に依存しているだけで、恋愛感情と思しきものは持っていない。それなのに連は、ありったけの愛を未亜にくれる。依存しているのはお互い様だが、愛情は連の一方通行だ。
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