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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
 茜は顎に手を添えて考える素振りを見せると、口を開いた。
「先生、依存してる人が他の異性と仲良くしてたら、どう思う?」
「え? うーん……」
 未亜は連が他の女性と親しげに話しているのを思い浮かべる。真っ先に出てきたのは、花梨。脳内でふたりが腕を組み、談笑している。あまりにもお似合いで、胸が締め付けられる。

「やだ……」
 それは無意識的に未亜の口から零れた言葉だ。それが自分の言葉だと知るのに数秒かかった。気づくと茜が保護者のような優しい眼差しを未亜に向けている。
「それが好きってことなんじゃない?」
「どうだろ、一概にそうだとは言えないんじゃないかな? だって、依存してたらその人は自分のものだって多少は思うし、嫉妬するイコール好きっていうのは早合点な気がする」
 未亜が反射的に否定すると、茜はおかしそうにクスクス笑う。自分でも気づかない何かを見透かされた気がして、居心地が悪い。

「何がなんでも自分がその人を好きって認めたくないみたいね。でもね、先生。恋をするのは悪いことじゃない。傷つけ合うこともあるけど、それもいずれいい思い出に変わることだってあるもの。なんて、先生からすれば安っぽいセリフかしらね?」
「別に認めたくないわけじゃない、と思う。自分でもよく分かんないんだ。そもそも好きって何? って感じだし」
「天邪鬼ね」
「知ってる」
 どちらからともなく笑い合うと、茜のスマホから、オルゴールのような音が流れ出した。茜は急いで切ると、クロワッサンサンドを詰め込み、アイスティーで流し込んだ。

「そんなに慌ててどうしたの?」
「今日派遣なの。帰って汗流さなきゃ。先生はゆっくりしてて」
 茜は早口で言うと、慌てて店を飛び出した。
「遅刻とかしなきゃいいけど……」
 茜の心配をしながら時計を見ると、8時半だ。ビルから出ていった正確な時間は分からないが、1時間近く経っただろう。
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