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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「これ食べたら帰ろ」
 前向きになろうとつぶやくも、ビルに戻るのは少しだけ気が重い。昨晩、連はどこにも行かないと行ったが、父親の手紙に彼を賞賛する言葉が書いてあったら、心変わりをして帰ってしまうのではないかと不安になる。
「今回は随分と依存してるなぁ……」
 連のことばかり考えている自分に気づき、思わず苦笑する。

 朝食が終わると、カフェを後にして遠回りの帰路を辿る。ビル前に着くと、日向がフロイデの前を掃き掃除していた。
「珍しいね、ヒューが掃除なんて」
 声をかけると日向は小さく肩を揺らし、顔を上げて未亜だと分かると、気の抜けた顔をする。
「誰かと思ったら子猫ちゃんか。そういう子猫ちゃんこそ、こんな時間に珍しいんじゃないか?」
「んー、まあね。ところでマリア様は? 逃げられたの?」
「バーカ、違ぇよ。義姉さんは兄貴と旅行。アイツ、ようやく連休取れたからな」
 やれやれと肩をすくめる日向。なんだかんだで分かり合っているこの兄弟が、時々少し羨ましくなる。

「へぇ、そっか」
「開店まで時間あるし、1杯飲んでくか? おごってやるよ」
 嬉しい誘いにうなずきたくなるが、ビル前まで来てしまうと早く連に会って、もやもやした気持ちをすっきりさせたいという気持ちが勝り、首を横に振る。
「ううん、せっかくだけどいいや。仕事しないと」
「ははっ、仕事熱心だな」
「まあね」
 適当に理由をつけてその場を後にすると、ビルの階段を駆け上がった。

 上がった息を整えてドアノブに手をかけるも、ドアノブを下げるのをためらってしまう。いつもは勝手知ったる我が家のようにインターホンも鳴らさずに入るが、手紙を読んで泣きそうになっていた連の顔がチラつく。
 インターホンを鳴らすと、少し疲れた様子の連が出てきた。連は未亜を見るなり、怪訝そうな顔をして彼女の顔を覗き込む。いつもなら見つめ返して挑発的な発言をする未亜だが、今はそんなことをする余裕などない。
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