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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「そないな顔しいひんでください。うちは京都に戻る気はさらさらあらしまへん」
「本当に?」
 顔を上げると連が安心させるように、優しく微笑んでくれる。それだけで、胸にのしかかっていた鉛玉はすぅーっと消えていく。

「当たり前やろう。姫さんにも言うたやないどすか。何言われても京都には戻らへんって。京都に戻るちゅうことは、姫さんにjesterの皆、それに日向はんを裏切るちゅうこっとすさかいね。それに……」
「それに?」
 未亜が聞き返すと、連は自信に満ちた笑みを浮かべる。瞳は未亜が今まで見たことないほどきらめいていた。

「父上はうちのこと認めてくれましたしね。それも単に実力を認めただけちゃうくて、負けを認めたようなもんどす」
「え? どういうこと?」
 未亜の脳内がハテナで埋め尽くされていく。実際に会ったことはないが、ネットで調べて顔くらいは知っている。とても気難しそうな、鬼軍曹のような顔をしていた。連の話も相まって、いいイメージはない。むしろ最低な毒親という印象が強すぎて、彼が負けを認めるとはにわかに信じがたい。

「手紙には『自分が子供の時もああやって誰にも褒められへんで育ったちゅうのもあるが、自分より才能のあるお前が妬ましかった』とも書かれとったんどす」
「要は八つ当たりしてたってことね、大人気ない……。けど、認めてもらえてよかったね。おめでと」
「おおきに」
 そう言って微笑む連は、憑き物が落ちたような清々しい顔をしている。その顔を見て安堵するのと同時に、面白そうな案が思いつく。

「ねぇ、連。お父さんは自由にしていいって言ってたんなら、次の話、主役やってみない?」
「主役? うちが?」
 連は自分を指差し、目をパチクリさせる。今まで身バレを恐れていた連は、仮面を被って進行役をするくらいだった。舞台に立ったとしてもセリフが2,3しかない上に顔が隠れる役しかやってこなかった。そのため、主役に指名される日が来るとは思ってもみなかったのだろう。
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