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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
 練習場に行くとちょうど休憩時間だったらしく、彼らはパイプ椅子や床など、思い思いの場所に座って水分補給をしていた。よく見ると茜に心太、マリーがいない。彼らはバイトをしながら演劇をしているので、全員揃う方が珍しいが。
「皆お疲れ。次の台本出来たよ。ここにいない人達の分は、団長預かっといて」
 未亜は自分の台本を取ると残りを連に渡し、キャラクターシートを彼らに配った。
 連は台本を配り終えると残りを長テーブルの上に置く。その上にキャラクターシートを何枚か置くと、彼らに向き直る。

「今回は中世ヨーロッパみたいな世界観をイメージしたよ。いつもどおり大雑把にキャラクターの性格や過去を伝えるから、キャラクターシート頑張って埋めてね」
「これ書くの初めてどすけど、キャラクターの性格や半生を考えるんどしたっけ?」
 キャラクターシートをまじまじと見つめながら質問する連を見ながら、彼が今までまともに舞台に立っていなかったことを思い出す。
「うん、そうだよ。あと仕草とか、このシーンではどんな気持ちになったかとか。仲のいいキャラクターを演じる人と話し合いながらやってもいいかもね。今回団長が演じる役は子供時代もあるから、子供時代を演じる直己と話し合って書くといいかも」
 未亜が言い終わると、直己は連の前に立つ。身長差と直己の童顔で、親子に見えなくもない。
 緊張しているのか、直己の頬は微かに赤らんでいる。

「団長、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしゅうおたのもうします。慣れてへんさかい、色々教えとくれやっしゃ」
「はい、俺で教えられることなら!」
 直己が張り切って返事をしたところで、ふたりに彼らが演じる道化師の半生を伝えた。道化師の幼少期、人生のターニングポイントなどをざっくり伝えると、他の役者にもそれぞれのキャラクターについて話す。
 全員揃っていないのが少し残念だが、こうして和気あいあいと同じ作品を作り上げる者同士で話し合っている時間は、未亜にとってかけがえのない時間だ。
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