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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
 本日不在の茜達以外への説明が終わると、未亜は部屋の隅に座って今日来ていないメンバー達に、配役や演目のあらすじをラインで伝える。特に茜はjesterに入って初めてのメインヒロインだ。そのことを一刻も早く伝えたかった。
「シャムちゃん、ちょっと聞きたいことが」
 凛子に呼ばれ、再び彼らのもとへ行く。個々のキャラクターについてある程度の助言をし、自分が作り上げたキャラクターが徐々に具現化していくのを眺めていた。

 未亜が解放されたのは、夕方になってのこと。帰ろうとする未亜を団員達は食事に誘うが、それを断り、コンビニでお菓子と夕飯を調達する。そのまままっすぐネットカフェに入る。個室を選ぶと漫画コーナーに行き、一昔前に話題になって映画化した少女漫画を手に取って個室に戻る。
 強気な女子高生がふたりの男子生徒に言い寄られるという、どこにでもありそうだ内容だ。ひとりは寡黙でクールな同級生、もうひとりは学校1の遊び人。遊び人の彼は寡黙な同級生が恋愛しているのを面白がってちょっかいをかけてくるのだが、次第にヒロインに本気になっていく。

 この作品は他の少女漫画にくらべて男性の心理描写が多い。女性が作ったフィクションだと言ってしまえばそれまでだが、男性の恋愛心理を知るにはちょうどいいと思いながら、ページをめくっていく。
 ライバルに取られたくないという焦り、自分が言い寄るせいで彼女が傷つけられるという悲しみ。時折自信を失くし、ライバルの方が彼女を幸せにできるのかもしれないという諦めと葛藤。そして、何があっても彼女を守りたいという強い意志。
 それらが見事に描かれている。多くの女性が夢中になったのも、分からなくもない。だが……。

「分かんないなー。守りたいって何から?」
 いつもの屁理屈タイムが始まってしまった。ヒロインはいじめられていたが、強気な彼女は自分で解決した。寡黙な同級生を選び、遊び人に「私はこの人と幸せになるから、あなたのところには行かない」と言ったのもヒロイン。男が守る前に、彼女が自分で解決してしまう。
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