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好きと依存は紙一重
第5章 好きと依存は紙一重
「ダメ、色々参考にしすぎるからいけないんだ」
 漫画を戻すと、腹ごしらえをして仰向けに寝る。集中して考え事をする時に、空腹ではうまく行かない。
 まず、強姦魔から助けられた日のことを思い出す。これは人生で1番ヒロインらしい1日を過ごした日だ。あの時の連は少し怖かったが、とても頼もしく見えた。彼の勇姿を思い出しただけで頬が緩む。
 ではその姿にドキドキしたか? 答えはノーだ。恐怖と混乱でそれどころではなかった。

 もし連がいなくなったら?
 この質問を思い浮かべただけで胸が苦しくなる。だがこれはそれだけ依存しているという解答が的確な気がする。
 もっとシンプルかつ単刀直入に。連にときめいたことはあるか? これはノーともイエスとも言い難い。未亜は猫やぬいぐるみなど、可愛いものにときめくことが多い。そういった意味ではときめいたことはある。
 悲しいかな、恋愛映画を観た時のようなときめきは、連でも彼以外でもしたことがない。

 次に花梨に詰め寄られた日のことを思い出す。連に自分の幻想を押し付け、何も知らないのに連を連れて行こうとした彼女のことを思い出しただけで、思わず舌打ちをしてしまうほどイライラする。深呼吸して気持ちを落ち着かせると、次の問を出した。
 ビルに押しかけてきた時、もしくは裏路地で偶然再会した時、連が自分の意志で向こうへ行き、彼女を抱きしめたら?
 考えただけで目頭が熱くなり、虚無で覆い尽くされそうになる。

「これは、嫉妬……?」
 答えてくれる者はここにはいない。
 連が他の女性とよろしくやっているのを想像しただけでここまで気持ちが掻き乱されるのは、ある意味大きな収穫だ。お茶で喉を潤し、次の問を出そうとするも、思い浮かばない。

「こういう考え方がよくないのかな?」
 これは未亜の偏見だが、恋愛は感情任せにするものだ。好きな人が近くにいるだけでドキドキして、好きな人が別の異性といるだけで胸が締め付けられる。好きな人が笑いかけてくれるだけで、天にも昇りそうなほど嬉しくなる。未亜はそういったものを経験したことがない。
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