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好きと依存は紙一重
第1章 決意
 スマホをポケットから出してニュースを流し読みしていると、連が出てきた。
「よし、部屋行こ」
「はい」
 ふたりは8階にあるツインルームに入る。部屋はさほど広くはないが、窓際にふたり掛けのテーブルセットがある。ふたつ並んだベッドの向かいの壁には、液晶テレビがかけてあって、ベッドに座って見ることができる。その下には低めの台があって、電気ケトルに電子レンジといった家電と、紅茶のティーバックとドリップコーヒーがふたつずつ並んでいた。

「とりあえず、お風呂沸かしてくる」
 未亜は風呂場に行き、湯船に栓をして蛇口をひねった。流れてくる水が少し熱めのお湯になると、風呂場を出て部屋に戻る。
 ベッドに腰掛け、ミネラルウォーターを飲む連を見て固まる。金髪だった髪が夜のような黒髪になっていた。こちらに気付いた連と目が合うと、未亜は向かい合うようにしてもうひとつのベッドに座った。

「ウィッグだったんだね」
「えぇ、染める時間があらへんさかい」
「人によっては、肌荒れしちゃうしね」
 そう言って未亜は寝転ぶ。本当はすぐにでも連に色々聞きたいところだが、今はホテルに泊まれた安心感を噛み締めたい。

「そういえばこれ、おおきに」
 なんのことかと思いながら身体を起こすと、連はモバイルバッテリーを差し出していた。
「すっかり忘れてた。どう? 少しは充電できた?」
「おかげさんで50%まで充電できました」
「そっか、よかったね」
 未亜はパーカーのポケットにモバイルバッテリーをねじ込むと、再びベッドに寝転んだ。物音がして連がいる方を見ると、リュックサックから充電器をひっぱり出していた。

(そういえば、そろそろかな)
 風呂場に行くと、お湯が溜まっていた。蛇口をひねってお湯を止めると、風呂場から顔だけ出す。連は難しい顔をしてスマホを見ていた。
「お風呂沸いたけどどうする?」
「お先にどうぞ」
 お言葉に甘えて、先に入ることにした。連のためにもはやく出ようと思っていたが、髪と身体を洗ってから湯船に浸かると、そんな考えはすっぽ抜けてしまった。暖房で温まりきらなかった身体がじんわりと温まっていくのが心地良い。
 結局未亜が風呂から出たのは、20分後だった。
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