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好きと依存は紙一重
第1章 決意
 置いてあったバスローブに着替え、元々着ていた服は、貴重品と一緒にクローゼットに押し込んだ。
「お待たせ。長風呂しちゃってごめんね? って、どうしたの?」
 連はベッドに横たわり、忌々しそうにスマホを見ていた。いつもは相手が不機嫌でも気づかないふりをしている未亜だが、彼が家出したことを考えると、気になってしまった。

「着信拒否やらメール拒否の仕方分からんで困っとるんどす。どないしたらええか分かります?」
 日本舞踊の若きスターだ、姿を消して放っておかれるはずがない。きっと着信やメールの嵐だろう。未亜はスマホを受け取り、連絡先をブロックすることにした。だが、親切心だけでスマホを受け取ったわけではない。メールをいくつか覗いて、小説の参考にしようと考えていた。
「どの連絡先拒否すればいいの?」
「全部」
「家族も?」
「はい」
 連の重苦しい返事で、メールを見る気が失せてしまった。きっと家族とうまくいっていなかったのだろう。家族との不仲で家出した未亜は、それがどんなにつらいのかを嫌というほど知っている。黙々とすべての連絡先をブロックし、自分の連絡先を登録してからスマホを返した。

「これで誰からも連絡来ることないと思うよ。あと、アタシの連絡先登録しといたから」
「え?」
「ひとりで東京来たんじゃ色々心細いでしょ? 家出の先輩が、色々教えてあげる」
「あんさんちゅう人がよう分かりまへん。なんでそこまでするんどすか?」
「アタシ、作家志望なんだよね。小説でも、演劇台本でも、ゲームシナリオでもなんでもいい。とにかく自分で紡いだ文章を、世の中に出したいわけ。面白い話を書くにはさ、色んな経験が必要なの。日舞の若きスターの家出を手伝うなんて、滅多にできないじゃない?」
 屈託のない笑顔で言うと、連は口元を押さえて笑った。
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