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好きと依存は紙一重
第1章 決意
「ほんまに変わった人。そんなんなら、お言葉に甘えさせてもらうなぁ」
「うん、是非そうして。って、ちょっと長話しちゃった。ぬるくなる前にお風呂入っちゃって」
「はい」
 連はスーツケースから着替えを取ると、風呂場へ行った。彼が風呂に入っている間、未亜は電気ケトルでお湯を沸かす。

 お湯が沸くまでとスマホを見ていると、速報が入ってきた。”日本舞踊の若きスター、大槻連行方不明”というタイトルだ。気になって読んでみると、今日の公演後、姿を消してしまったという。
「ここにいるけどね」
 浴室を横目に見ながらボソッと言うと、ニュースを閉じた。暇つぶしにSNSを見ようとしたが、モバイルバッテリーは空っぽな上に充電器を持ってきていないため、諦めて電源を切ってベッドに寝転ぶ。

 10分後、長襦袢を着た連が出てきた。
「ええ湯どした」
 洗い髪を拭きながら言う連は、歳に合わない色香を放っている。今まで色んな男性と関係を持ってきた未亜だが、不覚にもドキッとしてしまった。
「よかったね。紅茶と珈琲、どっちがいい?」
「珈琲を」
「はいよ」
 未亜はドリップ珈琲をふたつ開けると、電気ケトルを傾けた。溢れないように微調整しながらゆっくりお湯を注ぎ、ふたつのマグカップがいっぱいになると、珈琲カスをゴミ箱に捨てた。

 ベッドの間にあるサイドテーブルに珈琲を置くと、コンビニで買ったチョコレートを開けた。
「ほんまに甘いものが好きどすね」
 連は苦笑しながら言うと、珈琲をひと口飲む。
「まーね。連も食べていいよ。さっそくだけどさ、どうして家出したの?」
 連は一瞬だけ悲しげな顔をし、力なく笑う。その顔には諦めが滲んでいるような気がした。

「物心つく前から日本舞踊をしてきたけど、褒められたことあらへんのどす……」
「え? でも、軽く調べたら大槻連は日本舞踊の若きスターとか、女形と言ったら大槻連とか書かれてたよ? 結構すごいんじゃないの?」
 未亜の言葉に、連は静かに首を横に振った。
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