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好きと依存は紙一重
第1章 決意
「父上の教育方針言うたらええんどすかね? 周りの人にも、うちのことは褒めるな言うとったんどすえ。誰よりも上手に踊っても、誰も褒めてくれまへんどした」
「で、でもさ、お客さんは? あれだけネット記事に書かれてるんだもん、お客さんは褒めてくれたんじゃないの?」
 いくらなんでもあんまりだと思い、すがるように聞いた。日本舞踊がどんな世界かはよく知らないが、厳しい世界なのはなんとなく分かる。これだけの名声を得るのに、連が血の滲むような努力してきたのも想像がつく。だからこそ、彼を認める存在がいると、本人の口から聞きたかった。

「お客は褒めてくれました。そやけど、すぐに父上が釘を刺しに来るんどす。素人の褒め言葉なんかあてにならへんさかい、真に受けるなって」
「うわぁ、ひどい毒親……」
 予想以上の酷さに、吐き気を覚える。そこまで劣悪な環境で努力してきた連を思うと、目頭が熱くなる。

「毒親ってなんどすか? ちゅうか、なんであんさんが泣きそうになってるんどすか?」
「だってさ、認められないって辛いじゃん。しかも親に認めてもらえないなんて辛すぎる……」
 涙が零れそうになってうつむく未亜を見て、連は優しく微笑んだ。
「あんさんはえらい優しい方どすなぁ。初めて会うたのに食事処に連れて行ってくれて、宿も探してくれて……。ほんでもう充分やのに、うちの話を聞いて、心を痛めてくれるやなんて」
「だって、あんまりじゃん。勝手なイメージだけどさ、日舞とか歌舞伎とかって代々受け継いでやるから、最初からそれなりの知名度あっただろうけど、それでも実力つけるための努力って必要だろうし。これだけネット記事になるほど有名になるには、血の滲むような努力をしたでしょ? それなのに認めないって酷すぎる。それも周りを巻き込んで、観客の言葉も台無しにしちゃってさ、本当に最低!」
 言い終わって感情的に話してしまったことに気づき、顔が熱くなる。連が笑うものだから余計に顔が熱くなってしまい、冷蔵庫からお茶を引っ張り出して半分近く飲み干した。
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