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好きと依存は紙一重
第1章 決意
「まさかそないに怒ってくれるなんて……。ちょうど逃げてきたことへの罪悪感が押し寄せてきてしんどかったんどすけど、あんさんの言葉で救われました。なんかお礼をさせとぉくれやす」
「それならさ、踊って見せてよ」
「え? それだけでええんどすか?」
 目を輝かせてねだる未亜に、連は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。そんな連を見て、未亜は小首をかしげた。

「それだけって言うけど、すごいことだよ? プロがタダで踊ってくれるなんて」
「あんさんがそれでええのなら、構いまへん」
 連は穏やかな笑みを浮かべながら言うと、スーツケースを開けて何かを取り出す。電気ケトルが置いてあるテーブルに小さなカセットテーププレーヤーを置くと、扇子を広げてから再生した。カセットテープから、ノイズ混じりで三味線の音が流れてくる。連はその音に合わせ、雅やかに舞ってみせる。

 物憂げな表情が色っぽい。歌もなければ衣装もないというのに、叶わぬ恋に苦悩する乙女の様に見えてくるから不思議だ。音が止まると、連は扇子を閉じて一礼した。未亜は惜しげもなく拍手をすると、連を抱きしめて触れるだけのキスをした。
「すごいよ! 見てるだけで切なくなっちゃった。日舞まったく知らないアタシがここまで感動するんだもん、連にはすごい才能がある! 本当に、努力を積み重ねて来たんだなぁって」
 そこまで言って、連が口元を押さえて真っ赤になっていることに気づく。勢いでキスをしてしまったことに気づき、小さく笑う。

「あ、ごめん。もしかしてファーストキスだった?」
 未亜の問いに無言で頷く連。よく見れば、耳まで真っ赤だ。そんな連があまりにも可愛くて、口元を押さえる手を退かして唇を重ねた。今度は触れるだけのキスではない。
 舌を侵入させ、容赦なく絡ませる。逃げようとする連に全体重をかけて壁に押し付けると、じっくり味わう様に彼の舌を吸い上げる。
「んっ、ふぅ……んんっ!」
 連は未亜の肩を押すが、キスで力が抜けているせいで、抵抗とは言い難いものだ。手首を掴んで壁に押し付けてやれば、連は小さく身体を跳ねさせる。
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