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好きと依存は紙一重
第1章 決意
 大槻連が昨日の公演後に失踪したというニュース。このことがニュースになっているのは未亜も知っていた。問題は別にあった。同日、五条駅と京都駅を繋ぐ線路で人身事故があったという。その遺体は身元不明だが、若い男性だということだけは分かっているらしい。警察はこの遺体が大槻連である可能性を視野に、慎重に捜査を進めていくとのこと。
「このまま死んだことになったら、ええんどすけどなぁ」
「そんなことになったら大変だよ、バカ!」
 呑気に言う連を叱り飛ばすと、未亜は冷蔵庫からそれぞれの朝食を引っ張りだし、連に押し付けるように渡した。

「急いで食べて! 今日は忙しくなるよ!」
「何慌ててるんどす?」
 自分が大変なことになっていることに気づいていない連に、未亜は心底苛ついた。いくら箱入り息子でも、家出をするなら必要最低限の知識を身に着けてほしかった。

「死んだことにされたら、部屋借りらんないよ? 働く場所はあるかもだけど、限られるし。他にも色々支障が出るから、ご飯終わったら市役所行こ。てか、保健証とかある?」
「なるほど。そんなん、これっぽっちも考えてまへんどした。保健証ならありますえ」
「保健証あるならたぶんなんとかなるでしょ。とにかく、ささっと食べよ。あ、食べてる間、充電器借りていい? たぶんアタシのスマホそろそろ死ぬ」
 未亜がまくし立てるように言うと、連は数秒考え込んでから、コンセントにささっている充電器を指差した。

「どうぞご自由に」
「ありがとう」
 クローゼットのパーカーからスマホをひっぱり出すと、充電中だった連のスマホを抜いて、自分のスマホを充電した。赤いランプがつき、相当消費していたことを知る。せめてホテルに着いてから電源を切っておくんだったと後悔しながら、ベッドに戻って朝食を詰め込むように食べる。
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