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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「まぁ、なんていじらしいのかしら……」
「どうでもいいけど、先生と団長に聞こえても知らないぞ」
 心太は珈琲カップに角砂糖を何個か落としながら、うんざりしたように言う。
「それはいけませんわ。おふたりには自力で愛を芽生えていただきたいんですもの。私達の言葉で意識するようにだなんて……。いえ、それはそれでなかなか……」
 ブツブツと独り言を言い始めたマリーに茜は苦笑し、心太はうんざりしながら珈琲を流し込む。

 その隣のテーブルでは3人の男女がトランプをしながらおしゃべりを楽しんでいる。
「ねぇアンケートですって。なんて書こうかしら? たまにはスパイものとかいいと思わない? 女スパイが情報と男達の心を盗んでいくの」
 そう言って妖艶に微笑む黒髪のグラマラスな女性は、絢香。よくマリーとヒロインの座を巡って争っている。
「絢香さんがボディライン目立つ服着たいだけでしょ? わざわざそんなの着なくても、絢香さんのスタイルの良さも美貌も、眩しいくらいだよ」
 絢香をべた褒めする高身長のこの男は、涼。道具係兼役者だが、道具係メインで動いている。穏やかで皆に慕われているが、天然タラシが玉にキズ。
「まーた女口説いて。いい加減にしろよな」
 棘のある口調で涼を責め立てるのは、直己。小柄で少女のような顔立ちをしているが、れっきとした男だ。凛子同様、子供役をやることが多い。

「いやだなぁ、直己ちゃん。俺は口説いてるんじゃなくて、本当のことを言っただけだよ」
「ちゃん付けすんな! この天然タラシ! ぎゃっ!?」
 いきなり冷たい手で首を掴まれ、直己はカエルをつぶした様な悲鳴を上げる。見上げると、食べかけのサンドイッチを片手に持った未亜が、直己を見下ろしている。
「ナオくん、大きな声を出したら他のお客さんに迷惑だよ」
「そういうシャム猫先生は、食事中にウロウロするのは行儀が悪いですよ」
 未亜は一瞬上を見上げて考えると、食べかけのサンドイッチを放り込み、直己のお冷を飲み干した。
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