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好きと依存は紙一重
第2章 jester
 このチューインガムは未亜が食べるわけではない。翔に渡して貸し借り無しにしようと思ってのことだ。
 翔は悪い人間ではないが、馴れ馴れしく軽薄な人間が苦手な未亜は苦手意識を拭えないでいる。最初は慣れるかと思ったが、彼がこの本屋で働きだして半年、まったく慣れないでいる。
「お待たせ」
 翔は本を片手に戻ってくると、カウンターに入ってレジ打ちをしてくれる。

「袋もブックカバーも大丈夫。これ、本探してくれたお礼」
 翔が袋を出す前にチューインガムを差し出しながら言うと、翔は嬉しそうに目を細めた。
「未亜ちゃんは優しいな=」
「借り作りたくないだけだから。じゃ、お疲れ」
 ぴしゃりと言って背を向けると、後ろから笑い声が聞こえた。未亜は聞こえないふりをして、そのまままっすぐ帰宅する。

 安アパートに着くとPCカバンと買った本をテーブルの横に置き、台所に立つ。唐揚げ用の鶏肉を塩コショウで味付けしながら焼き、レトルトご飯をレンジで温める。肉が焼けると、今朝作っておいた野菜たっぷりのコンソメスープがまだあるのを思い出し、冷蔵庫から鍋を引っ張り出して火にかける。コールスローを半分小皿によそってドレッシングをかけると、テーブルの上に並べた。
 温まったコンソメスープを後から持ってきて、夕食の完成だ。

 行儀が悪いと思いながらも、未亜は買ったばかりの本を読みながら食事をする。咎める者もいないので、自由気ままだ。夕食をすべて平らげると、シンクに水を溜めて食器を冷やし、ついでに冷蔵庫からアイスティーとチョコプリンを持ってくる。
 クッションを抱えながら床に寝転ぶと、読書を再開させる。
 今度はチョコプリンやアイスティーがなくなっても、追加を持ってくることはない。1度トイレに行ったくらいで、あとはずっと読書に集中していた。
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