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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「うん、気持ち悪い。あと、!のあとはスペース」
 いきなりDMに来られた不快感で、黒犬の高感度が下がっていく。
 未亜が使っている小説投稿サイトにはツイッターのようにつぶやき機能があって、フォローしている人にだけ見えるようになっている。jesterで脚本を書いていることも公演日もつぶやき機能で宣伝しているので、フォローしている人が公演を観に来るのも、感想を未亜に伝えるのも問題ない。
 きっと普通に伝えてもらえたら、素直に嬉しいと思えただろう。さっきの会話の流れで話せばよかったものを、わざわざDMで伝えてくるあたり、DMで話すことによって自分と特別な繋がりがあると錯覚しようとしているように思えて気味が悪い。
 被害妄想だと言われればそれまでだが、実際にDMをしたから特別な関係だと勘違いする人も案外多い。

”そうなんですね、ありがとうございます”
 少し距離を置こうと、わざとそっけない返信をする。
”はい!素敵すぎて何回も観に行っちゃいました!次はどんな脚本を書くんですか?”
「バッカじゃないの」
 あまりにも図々しい質問に、未亜は声を荒らげる。好きで書いているから書いているというのは今も昔も変わらないが、読者達の応援でモチベーションを維持しているところもある。黒犬のコメントにも、何度も救われた。それでも踏み込んでは行けない聖域というものがある。黒犬はその聖域に踏み入ろうとしている。

”そういった話は誰にもしないと決めてるので”
 送った後に流石に厳しくしすぎたかと少し後悔したが、すぐに打ち消された。
”そうなんですね、すいませんでした”
 この返信の後に、ここ数日の未亜のツイートにふぁぼ爆していく黒犬。元々ふぁぼ爆されるのが好きでない未亜は、舌打ちをしてツイッターを閉じた。
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