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好きと依存は紙一重
第2章 jester
 次に思い出したのが、高校で知り合った由香里。小動物のように愛らしい彼女には、社会人の彼氏がいた。恋愛に興味がなかった未亜でも、少し羨ましいと思うほどお似合いのカップルだった。
 だが高校の創立記念日に未亜がひとりでジャンクフード店へ行くと、由香里の彼氏は同僚らしき人に由香里の愚痴を話していた。
「創立記念日だから会社休んで欲しいとか困るよ。しかもことあるごとに俺のことを友達に自慢してるみたいでさー。若いから締まりはいいけど、フェラとか下手くそ。ちょっとしたことで記念日記念日ウザいし、別れようかな」
「お前にはユキちゃんいるんだしいいだろ。最初はびーびー泣くけど、そのうちいい思い出ーとか言って次の彼氏見つけるだろうさ」
 ふたりの会話があまりにも気持ち悪くて、食べかけのハンバーガーを捨ててしまったことを、今でも覚えている。

 未亜が今まで見てきた恋は傷つけあったり、一方通行だったりと、悲しいものばかりだった。現に連は未亜を好いてくれているのに、未亜は連を好きになれないでいる。
 今まで軽蔑していた彼らと同じなのが、悲しかった。
「そもそも好きって……」
 そこまで言って、ため息で続きを打ち消した。このままでは自分が嫌いなLikeとLoveについて考えるはめになりそうだからだ。そんなことを考えるのは、思春期女子だけでいい。心の中で自分にそう言い聞かせると、コンディショナーを落として風呂から出た。

 バスローブを着て髪を乾かすと、ベッドに戻った。連は未亜が抜け出した時と同じ格好をしている。愛しさがこみ上げ、頬が緩む。だがこの愛しさは、小さい子どもや小動物を見て可愛いと思う時の感情と酷似しており、決して恋愛的好意ではない。
 電気を常夜灯にすると、連の頬にキスを落として彼の腕に潜り込む。
(あ、スマホ充電してないや)
 このホテルは証明パネルの真下にスマホやガラケーの充電コードが収納されている。いつもは寝ている間にここで充電するのだが、スマホを取りに行く気力がない。
「まぁいっか。おやすみ」
 先に夢の中へ旅立つ連の胸板に顔を埋め、寝息を立てた。
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