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好きと依存は紙一重
第2章 jester
 翌朝、先に目を覚したのは連だ。結局あの後眠ってしまい、未亜の話を聞けなかったことを思い出し、後悔に苛まれる。
「はぁ、やってもうた……」
 横目で未亜を見てみると、気持ちよさそうに眠っている。彼女を起こさないようにそっと起き上がると、フロントに電話して銀鮭定食とトーストセットを注文した。
 汗でベタついていることに気づいて風呂場に行くと、薄紫色の水が張ってある。あの後未亜が、ひとりで風呂に入った後だ。

 連はシャワーで軽く汗を流すと、バスローブを着て電気ケトルでお湯を沸かす。紅茶、ドリップ珈琲、煎茶がふたつずつ置いてある。未亜が起きたらご所望のものを淹れてあげようと思った。
 待っている間、スケジュール帳アプリで今日の予定を確認する。といっても、前回の公演が終わったばかりで、基礎練習の予定しかないのだが。

 お湯が沸くのとほぼ同時に、誰かがドアをノックする。返事をして開けると、40代くらいの薄化粧をした細身の女性が立っており、隣には朝食がのったワゴンが置いてある。
「銀鮭定食とトーストセットをお持ちしました」
「おおきに」
 女性から料理を受け取ってテーブルに並べると、バサッという音がした。振り返ってみると、未亜が目を輝かせてこちらを見ている。

「ごはんっ!」
 嬉しそうに駆け寄ると、トーストセットの前に座る。
「お湯沸きましたけど、何飲みます?」
「紅茶」
 連は逆さまになっているマグカップふたつを元に戻すと、煎茶と紅茶を淹れた。紅茶も飲めなくはないが、煎茶が1番落ち着く。

 連が隣に座ると、未亜はトーストを持ったまま彼に寄りかかる。
「昨日は先に寝てもうてすんまへん……」
「いいよ、別に。今思い返してみれば、大したことじゃなかったの。なんであんなに怒ってたのか、不思議なくらい」
 憑き物が落ちたような、清々しい顔をする未亜に、連は小首を傾げる。
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