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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「何があったんどす?」
「前に……、ううん、この話は後。昨日ね、お客さんが買っていった本で面白そうな本があったんだ。女性向け小説なんだけど男の人が買ってたから、余計に印象が強かったのかも。愛の蜜に溺れてっていうタイトルだったんだけど、すごくつまらなかった」
 そう言って未亜は、連にもたれかかる。いつもなら行儀が悪いと叱られるが、今日は優しく髪をなでてくれる。それが心地よくて、そっと目を閉じた。

「姫さんがそこまで言うなんて、よっぽどつまらへんかったんやろうな。どないな話なんどす?」
「平凡な女子高生が主人公なんだけど、ハイスペック委員長な幼馴染に片想いしてて、その幼馴染も主人公のこと好きでいてくれてるのに、うだうだしてた。まー幼馴染もちょっと不器用で好きの伝え方が遠回しだったんだけど。うだうだしてる間に学校のマドンナが幼馴染に言い寄るんだ。幼馴染はすぐに断るんだけど、マドンナが腕にしがみついてるところだけ見たから、勘違いして病むし」
 言葉を切ると、紅茶で喉を潤した。トーストを食べていたから、余計に喉が渇く。
「うわぁ、その時点でもうええってなりますわ……」
 連のげんなりした顔に、自分の感性が狂っているわけではないと再認識して、内心安堵する。

「でしょ? それで幼馴染が誤解だって言いに来てくれたのに聞く耳を持たないし。そのくせ周りが「委員長とあの子が一緒にいるの見るけど釣り合わない」って言葉は鵜呑みにして自殺未遂しちゃうし。それで意識不明になっちゃうんだけど、毎日幼馴染が来て声をかけてくれて、意識は戻らないけどその声だけは聞こえてるっていうご都合主義。ある日ようやく目が覚めて……、この先は言わなくてもだいたい想像つくでしょ?」
 そう言って未亜は嘲笑すると、残りのトーストを頬張って紅茶で流し込んだ。
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