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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「えぇ、なんとなくは。ところで、もうひとつなんか言おうとしてまへんどした?」
 連が次の話を振ると、未亜は苦虫を噛みつぶしたような顔をする。一時は大したことないと思ったが、やはり腹立たしいことに変わりはない。
「あー、うん……。よくペコメとかレビューくれる黒犬さんって人がいるって前に話したでしょ? ツイッターでアタシに話しかけるためだけにアカウント作って声かけてきたんだけど、DMで話したいって言われて話したの。jesterの公演観にきてくれたりしてたらしいんだけど、わざわざDMで話すことでもないし、次はどんなシナリオ書くか聞かれたりして、それでイライラしちゃった」
 嫌になるとため息をつくと、優しく抱きしめられた。そのまま甘えるように寄りかかる。

「そんなん、イライラしてもしゃあないどすえ。大変どしたなぁ」
 連の労りの言葉が荒んだ心に沁みていく。連に抱きついて深呼吸をし、肺を連の匂いでいっぱいにする。
(ホント、ほしい言葉くれるよね。だから依存しちゃうのに)
 ありがたいと思うが、少しだけ罪悪感が芽生える。純粋に自分を愛してくれている連に愛を返すことなく、こうして都合のいいように利用してしまっているのが申し訳ない。

(あー、そっか。あの小説、ある意味今のアタシみたい)
 あの小説にイラついた最大の理由を見つけた気がして、連に顔を埋めたまま失笑する。もっとも、あの小説の主人公は幼馴染のことが好きで悩んでいたが。
 ひとりで納得していると肩を掴まれ、神妙な顔で見つめられた。連がこんな顔をするのは滅多にない。未亜は思わず背筋を伸ばした。
「その黒犬って人に、会おなんて言われまへんどした? 言われても、会わんといておくれやっしゃ?」
 一瞬過保護なのかと思ったが、連の表情で独占欲なのだと気づき、彼をできるだけ力強く抱きしめた。
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