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好きと依存は紙一重
第2章 jester
「会わないよ。私のこと尊敬してくれてるのは分かるけど、趣味合わなそうだし。そもそも会いたくないし」
「それ聞いて安心しました」
 抱きしめ返しながら言う連の頬に、キスをする。
(はたから見れば、恋人同士に見えるんだろうな)
 まだ完全に起ききっていない頭でぼんやり考えながら、内心嘲笑する。

 一方通行の愛は虚しいだけ。愛される方でもこう思うのだから、自分を愛してくれる連はこれ以上の虚無感を覚えているはずだ。そう考えると、自分はとんでもない悪女に思えてくる。
(神様ごめんなさい、好きになれません)
 心の中で信じていない神に謝罪をし、今度は唇に触れるだけのキスをする。愛を贈れないキスは、あたたかくも冷たかった。

「連、今日はどんな予定?」
「午後に基礎練習があるだけどすえ」
 そう言うと、連は無邪気な笑みを見せる。次の言葉を察した未亜は、呆れ返る。
「そやさかい、1本飲もかと」
「はいはい……」
 未亜がうんざりしながら返事をすると、連は楽しそうに立ち上がり、コンビニボックスの前にしゃがんだ。

「ね、お菓子は何あるの?」
「ポテトチップスのりしお味と板チョコ1枚。あ、ビールと一緒に柿の種もありますえ」
 ビールのところから声のトーンが上がる。一刻も早く呑みたいのが伝わり、苦笑する。連は未亜が呆れ返っていることに気づかないまま、ビールを購入する。
「板チョコ、食べるのん?」
「いや、いいや」
 未亜が断ると、連は何かを思い出したように小さな声を上げる。ビールと柿の種をテーブルに置くと、冷蔵庫の前に行く。中から何か取り出すと、こちらに戻ってきて未亜の前に置いた。期間限定のホワイトチョコレートだ。キューブ状のホワイトチョコレートに、ストロベリーソースが閉じ込められている。これだけ凝ったものだと、当然値も張る。見かけるたびに手を伸ばすが、値段を気にしていつも手を引っ込めていた。そんな高級チョコが、今、目の前にある。
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