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好きと依存は紙一重
第2章 jester
 ふたりはホテルを出ると、その場で別れた。連は酒抜きの散歩に行くと言っていたが、本当かどうか疑わしい。
「むしろ呑み足りないって顔してたけど、大丈夫かな?」
 午後に基礎練習があるというのを思い出し、少し心配になる。団長の連が酒の匂いをさせながら練習場に来ては、立場がない。

「ま、節度は守るよね……?」
 一抹の不安を抱えながらも、未亜は遠回りをしながら雑居ビルへ行く。すぐに行ってもよかったが、少し歩きたい気分だった。
「あら、シャム猫先生。ごきげんよう」
 横断歩道で信号待ちをしていると、マリーがにこやかに挨拶をしてくれる。今日も黒が基調のエレゴスファッションだ。

「おはよ、マリー。今日も可愛いね」
「先生ったら、お上手なんだから」
 そう言ってマリーはほほほと笑う。
「これからどこかおでかけ?」
「えぇ、役者全員でフロイデに集まって、昨日いただいたアンケートを書くことになっていますの」
「お、じゃあ途中まで一緒だね。アタシ、jesterの作業場に行くんだ」
「まぁ、先生とご一緒できるなんて光栄ですわ」
 マリーは胸の前で手を組み、目を輝かせる。ふたりは雑談をしながら、いつもの道を歩く。何故かマリーは、連のことをどう思っているかなどをやたら聞いてくる。

 目的地に着いてビルに入ろうとすると、マリーに呼び止められた。
「よかったら、ご一緒しません?」
「お誘いは嬉しいけど、アタシがいると無意識に自分の意見書けなくなりそうだからいいや。それに、やりたいこともあるし」
 それじゃ、と言って、未亜はビルに入って2階に行くと、合鍵を使って中に入る。左側の突き当りの小部屋は、未亜専用の作業場となっている。3畳程度の狭い空間は余計なものを置けないので、作業が捗る。
 真っ赤な片袖机に座ると、1番上の引き出しからルーズリーフとプラスチック製の筆箱を引っ張り出した。
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