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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
以前名のある脚本家が携わった演劇を観に行ったことがあったのだが、舞台挨拶に脚本家が出てきた。彼は最初は役者達や裏方を称賛していたが、物語自体の話になると難しい言葉を交えた自分語りになり、感動が台無しになってしまったことがある。それを見てから、どんなに有名になっても表舞台には絶対に上がらないと決めている。
最大の理由は、読者や観客に色眼鏡をかけさせないためだ。作者の性別や年齢が分かると、「若い女が書いた冒険小説なんて」「中年男性が書いた恋愛小説なんて」など、色眼鏡をかけてしまう者がいる。
実際に社会現象になるほどの話題作を書いた若い美人作家は、枕営業をしたなど陰口を叩かれていたと、ドキュメンタリー番組で暴露していた。
「んー、どうしよっかな」
「姫さん、けったいなこと考えてへんやろうな?」
連は訝しげな目を未亜に向けた。きっと未亜が余計なことをしでかすと疑っているのだろう。実際に、未亜はこのメールの主をどうしてやろうかと考えている。
「そんなことしないって」
そう言いながらメールを見返すふりをして、メールアドレスをコピペし、自分に送って送信履歴を消した。
「何してはるんどすか」
「メール読み返して、この人の性格とか年齢とか性別とか分かんないかなーって。ホームズじゃないから、無理でした」
降参と言って両手を上げる。それでも疑いの目は向けられたまま。
(ちょっと前までは世間知らずの箱入り息子だったのに、日に日に勘が鋭くなってるな……)
連の成長が喜ばしくもあり、恨めしくもある。このままここにいても仕方がないと、席を立つ。
「どこに行くんどすか?」
「散歩ついでに古本屋巡り。皆のアンケート見ていいアイディア出そうだったんだけど、もうひと押し必要みたいだからさ」
適当に理由をつけると、未亜は外に出た。近くの公園に行く。日中は子連れで賑やかな公園だが、夕方になると人っ子ひとりいない。クレーマー宛にメールを書き始めた。
”本物のシャム猫です。あなたのメールはとっても迷惑。話があるなら直接聞いてあげる”
あえて挑発的な文面にし、今いる公園の住所を送る。jesterの公演はほとんどこの周辺でしている。来れないことはないだろう。
最大の理由は、読者や観客に色眼鏡をかけさせないためだ。作者の性別や年齢が分かると、「若い女が書いた冒険小説なんて」「中年男性が書いた恋愛小説なんて」など、色眼鏡をかけてしまう者がいる。
実際に社会現象になるほどの話題作を書いた若い美人作家は、枕営業をしたなど陰口を叩かれていたと、ドキュメンタリー番組で暴露していた。
「んー、どうしよっかな」
「姫さん、けったいなこと考えてへんやろうな?」
連は訝しげな目を未亜に向けた。きっと未亜が余計なことをしでかすと疑っているのだろう。実際に、未亜はこのメールの主をどうしてやろうかと考えている。
「そんなことしないって」
そう言いながらメールを見返すふりをして、メールアドレスをコピペし、自分に送って送信履歴を消した。
「何してはるんどすか」
「メール読み返して、この人の性格とか年齢とか性別とか分かんないかなーって。ホームズじゃないから、無理でした」
降参と言って両手を上げる。それでも疑いの目は向けられたまま。
(ちょっと前までは世間知らずの箱入り息子だったのに、日に日に勘が鋭くなってるな……)
連の成長が喜ばしくもあり、恨めしくもある。このままここにいても仕方がないと、席を立つ。
「どこに行くんどすか?」
「散歩ついでに古本屋巡り。皆のアンケート見ていいアイディア出そうだったんだけど、もうひと押し必要みたいだからさ」
適当に理由をつけると、未亜は外に出た。近くの公園に行く。日中は子連れで賑やかな公園だが、夕方になると人っ子ひとりいない。クレーマー宛にメールを書き始めた。
”本物のシャム猫です。あなたのメールはとっても迷惑。話があるなら直接聞いてあげる”
あえて挑発的な文面にし、今いる公園の住所を送る。jesterの公演はほとんどこの周辺でしている。来れないことはないだろう。