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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
 手を緩めてはくれたが、相変わらず無言で歩き続けている。
「連、どこ行くの?」
 未亜の問いにも答えようとしない。
(マジギレさせちゃったかな……?)
 いつもとあまりにも違いすぎる連の態度に、肝を冷やす。この2年、連が本気で怒っているのを見たことがなかった。そもそも声を荒げたところすら見たことがない。団員や未亜が何かやらかしても、少しキツい口調で叱責するくらいだ。その後優しい笑顔に戻り、「次からは気ぃつけとぉくれやす」で終わるのだ。

 何を言っても無駄だと悟った未亜は、うつむきながら大人しく連に引っ張られていく。白いタイルの階段を何段か登らされたところで顔を上げると、よく行くラブホテルのひとつだと知る。
 怒りに任せて抱くつもりだろうか? いつも優しく髪を撫でる手で乳房を乱雑に掴み、無理やり足を開かせるのだろうか? 考えただけで、血の気が引く。

 デリヘル嬢をしていれば乱暴な客と遭遇することもある。彼らに何をされようが、仲間に愚痴を言えばそれで忘れるが、連にだけは、そういうことはしてほしくない。
「連……」
 すがるように名前を呼ぶと、連はようやく足を止めた。だが、連が返事をしてくれることも、こちらを見てくれることもない。恐る恐る顔を上げると、パネルで部屋を選んでいた。空いている部屋で1番立派な部屋のボタンを押すと、部屋番号が書かれた紙が出てくる。連はそれをひったくるようにして取ると、部屋に向かって歩き出す。

 このホテルは敷地が広い代わりに2階がない。連は広々とした廊下を歩き、突き当りのドアを開ける。中に入って乱暴にドアを閉めると、痛いくらいに未亜を抱きしめた。
「何、考えとるんどすか……?」
 絞り出すように放たれた連の声は、聞いたことがないほど震えていた。その声を聞き、彼にどれだけ心配をかけてしまったのかを知る。
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