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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
「で、でもさ、自業自得じゃん! jesterに放火しようとしたんだもん!」
 凛子が連をフォローするが、その頬は引きつっている。
「いやあ、驚いた。あの優男がなぁ」
 そう言いながら、日向は心太のココアをカウンターに置いた。心太は凛子の隣に座ると、ココアを飲んで大きく息を吐く。

「男が失神した後、団長に頼まれてロープ持ってきたんですよ。あの男はもう動けないっていうのに、ギチギチに縛り上げてましたよ」
「ふふ、そっか」
 連が自分のために怒ってくれたのだと思うと、つい頬が緩む。未亜がようやく笑ったのを見て、誰もが安堵する。

「にしても、なんでjesterなんだろうね? うちの演劇団、まだそんな大きくないじゃん」
「あの雑居ビル、外観ボロいからな。廃墟だと思って放火しようとしたんじゃないか? 空き家とか廃墟を狙う放火魔って結構いるらしいしな」
「心太、さらっと失礼なこと言わないの」
 未亜が心太にデコピンを食らわすと、重苦しかった空気が徐々に和やかになってきた。

 出されたパフェがなくなった頃に、連はフロイデに入ってきた。
「団長、案外早かったですね」
「えぇ、今日はもう遅いさかい、少し話をして帰ってもろうた。ところで、ふたりはこないな時間にどないしたんどすか?」
(確かに、なんでふたりはこんな時間にいたんだろう?)
 時計を見るともう10時を回ろうとしていた。騒動ですっかり気が動転していて気づかなかったが、団員達が来るような時間ではない。

「コイツが、忘れ物したから一緒に取りに行ってほしいって泣きついてきたんですよ。夕飯おごるからって」
 心太はうんざりしたようにため息をつきながら、凛子の頭を撫で回す。心太の話を聞いて、ふたりが偶然同じアパートに住んでいたのを思い出す。
「コイツ言うな! だって、夜道を女の子ひとりで歩くの危ないじゃん!」
「安心しろ、夜道を歩いてるお前に近づくのはお前を迷子と勘違いした警察だけだ」
「なんだってぇ!?」
「はいはい、そこまで。忘れ物取りに来たんやろう? 今開けたるさかい、早う取って早う帰っとぉくれやす」
 今にも取っ組み合いを始めそうなふたりの間に連が入ると、ふたり共渋々引き下がった。
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