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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
「おぉ、1万円だぁ!」
「おいこら、団長達に聞こえるぞ!」
 連が声をかけようとすると、ドアの向こうで声が聞こえ、顔を見合わせて小さく笑う。
「連、今日は本当にありがと。それと、ごめん。浅はか過ぎた」
「分かってくれたらええんどす。今日はもう遅おすさかいね、泊まっていっとぉくれやす」
「うん、そうする」
 差し出された手を掴んで立ち上がると、2階にある連の寝室へ行く。部屋数の関係で、このビルにある未亜の部屋は、こじんまりとした作業部屋しかない。

 連はベッドの中で未亜を抱きしめると、リモコンで照明を常夜灯にした。
「ねぇ、明日はアタシも警察署に行ったほうがいいよね……?」
「実はまだ、姫さんのことは警察に言うてへんのどす」
「え?」
 驚いて連を見上げる。生真面目な連のことだから、てっきり洗いざらい警察に話していると思っていた。

「デリケートな問題どすさかいね。それに、姫さん警察好かんやろう? やさかい、勝手に言うんは気ぃ引けました」
 デリヘルで働いていた頃、強姦未遂に遭ったことがあった。その時偶然通りかかった警察官に助けられたのだが、彼は未亜がデリヘル嬢だと知ると、自業自得だと嘲笑った。去年、未亜が満員電車で痴漢に遭い、駅で警察を呼ぶと当時の警察官が来た。未亜を覚えていた警察官は自分から誘ったのだろうと心無い言葉を投げかけた。
 その時は連も一緒だったため、彼が理責めをしたら謝罪して犯人を捕まえてくれたが、警察が嫌いになった。
 それらのことを覚えて気を遣ってくれたのが嬉しくて、連の頬にキスをする。

「ありがと、連。すごく助かる。けど、必要だったら行くから、その時はちゃんと言ってね」
「はい。……今日はもう寝ましょう」
 連は返事をした後、あくびを噛み殺しながら言う。どうやら噛み殺してもあくびは移るらしく、未亜は小さくあくびをすると、連の胸板に顔を埋めた。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
 疲労が溜まっていたふたりは、間もなく寝息を立て始めた。午後11時、穏やかな時間が、ようやく訪れる。
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