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好きと依存は紙一重
第3章 暗雲
「朝から姫さんの手料理が食べられるなんて、嬉しおす」
 そう言いながら冷蔵庫に直行し、缶ビールを開けてゴクゴクと喉を鳴らした。よくもまぁ朝からビールを呑めるものだと、一周回って感心する。
「アタシ、ビール作った覚えないし、作れないんだけど」
 皮肉を言うと連は苦笑しながら椅子に座り、いただきますと手を合わせる。木製の匙ですくってひと口食べると、頬をほころばせた。

「美味しい……。ひとり分しかあらしまへんが、姫さんは食べへんどすか?」
「アタシはもう行くよ。今日は午前中からバイトだからね」
「あぁ、そういえばそうどしたなぁ。一緒に食べられへんのは残念どす……」
 寂しそうに言う連は、子犬のように愛らしい。思わずキスでもしそうになるが、今は彼を甘やかしてはいけない。

「ところで連、冷蔵庫の中ひどいからちゃんと買い出ししといてよ。卵2個とビールしかなくてびっくりしたよ。今は若いからいいけど、朝からビールなんて呑んでたら、年取ってからお腹出るんだから。そもそも不健康がすぎるし」
「すんまへん……。食料は今日、買うとくる……」
 連は気まずそうに目を逸らしながらも、大人しく頷いた。連のことだから約束を破ることはないだろうが、バイトから帰っても冷蔵庫の中身がこの有様だったら、少しいじめてやろうと思った。
「それでよろしい。健康には気をつけるんだよ、団長殿。それじゃ、またね」
「いってらっしゃい、気ぃつけて」
 連に見送られ、ビルを後にする。途中でジャンクフード店に立ち寄り、ハンバーガーをかじりながら帰宅する。シャワーを浴びて身なりを整えると、本屋に向かった。

 店内に入ると、ハタキで本棚を掃除している和仁と目が合う。
「おはよう、神谷さん」
「おはようございます、店長」
 和仁の柔和な笑みに癒やされながら、バックヤードに行く。珍しくはやくに来た翔が、片手を上げた。
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