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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
「あそこでお茶でもしまへんか? 少し、混乱しとって……」
「うん、いいよ。ゆっくりしてこ」
 未亜の返事に、連は安心したように笑む。
 カフェに入ると、奥の席に通された。店内は空いており、ふたりの他に3組程度の客がいるだけだ。適当に注文を済ませると、連はお冷を一気に飲み干した。

「薄桃色の着物を着た子がおったやろう? あの子は花梨といって、父上の付き人の娘なんどす。あの子、勘がええさかい、うちに気づいたかもしれまへん……」
 そう語る連の声は微かに震えており、呼吸も浅い。見つかることを恐れているのが、ひしひしと伝わってくる。
「こっち見て驚いた顔してたもんね……」
「しばらくは、外出を控えたほうがええやろうな……」
 そう言って、空になったグラスを寂しそうに見つめた。京都にいた頃は、時間を持て余し、あてもなく歩くなんてことができなかった。時間があれば稽古。たとえ風邪やインフルエンザの病み上がりでも、いつも以上に厳しい稽古が待っていた。
 そんな息の詰まるような日々から開放されたというのに、また不自由な生活を送らなければいけないと考えると、未亜まで悲しくなってくる。このままではいけないと、なんとか頭を回転させる。

「そんならさ、アタシのコレクション貸してあげるよ」
「コレクション?」
 連は顔を上げ、未亜を見つめる。サングラス越しでも、目を見開いているのは雰囲気でなんとなく分かる。
「そう、洋画のDVDコレクション。あと、本も。漫画も小説もたくさんあるし、きっと退屈しないよ。なんなら、ゲームも貸そうか?」
 未亜の提案に、連の口元に三日月が浮かび上がる。

「おおきに。なんか気ぃ遣わしてしもうたなぁ」
「いいのいいの、気にしないで。好きなものを共有できる人ができるのは嬉しいから。ここから出たら、うちに取りに行こうか」
「はい、おおきに」
 ようやく連の表情が晴れやかになり、安堵する。ふたりはお茶を楽しむと、未亜が住むアパートに行った。
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