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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
 jesterで働くようになってから、ここまで夜ふかしをしたのは初めてのことだ。
「連のせいだ」
 本当にそう思っているわけではないが、口にするだけで夜ふかしの罪が軽くなった気がする。
「バカなこと言ってないで寝よ」
 ゴミを捨ててマグカップとスプーンを洗うと、ベッドに潜り込んで寝息を立てた。

 翌日の午前10時、未亜はようやく目を覚した。あくびをしながら今日は早く寝ようと考え、パジャマのまま台所へ行く。軽食を作って食べると、身支度を整えて街へ繰り出す。
 今日は本屋のバイトも休みなので、また適当に演劇や映画でも観に行こうと考えている。電車に乗ってjesterの本拠地がある街へ行くと、映画館の前を通りかかる。壁に貼ってある上映スケジュールをチェックするも、好奇心を刺激するタイトルは見当たらなかった。

 今日は適当に本を買ってどこかでゆっくりしようとアバウトな予定を立て直し、近くにある大きめの図書館へ向かう。途中、歩きスマホをしている青年にぶつかりそうになりながらも、なんとかよける。
「しっかしまぁ、平日なのにどうして東京はこんなに人が多いかな」
 老若男女、黄色人、白人、黒人、軽く見渡しただけでもそれらがすべて視界に入る街に、少し嫌気が差す。

「学生の頃は、こんな街に憧れてたんだけどな……」
 高校時代、給料やパパからのお小遣いをもらうたびに東京へ遊びに来ていた頃のことを思い出す。あの頃は流行モノが即座に手に入り、様々な人が行き交う大都会に憧れを抱いていた。東京に住めば、何もかもが手に入ると信じていた。
 だが実際は地元の倍以上の家賃や、ダイレクトにのしかかる公共料金などに喘ぐ日々が待ち構えていた。いくら学生とは思えないほどの貯金を持って東京に来たとはいえ、将来を考えると好きなブランド服や流行りのスイーツに貯金を切り崩そうとは思えず、質素な暮らしをしていた。
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